1 / 11
第1話
性格が悪い。
そう言われたってどうしようもない。治す方法を教えてほしい。
「それじゃ昇進できねえぞ」
「なんか苦情出ました?」
「レイプ男って、ありゃひでえ」
「うわ」
レイプではない、彼女とセックスをしただけだ。それがちょっと痛かったとか強引だったとかで、泣かれ怒鳴られ、ブランドバッグの角の金具でしこたま殴られ、「死ね!」の捨て台詞でフラれただけだ。
『途中から濡れてたじゃん』
『痛いと濡れんだよ! あんたヘタ!』
こんな子ではなかった。昨日までは語尾にハートを飛ばすタイプの、ふんわかした可愛い子だった。ちなみに事務課。
「俺だって被害者っすよ、ヘタとか言われて」
「おまえ幾つだ、歳」
「二八です」
「ヘタとか言われてんじゃないよ。最低限、濡れてから入れろ。そうすりゃ文句でないもんだよ」
「普段は前戯もしますって」
六十秒くらい。
「おまえモテるんだろ?」
「そこそこです」
猿崎郁男 は、顔だけは良かった。背は一七八で体型は標準。寄ってくる女には事欠かず、ただし続いた試しもない。
「ま、いいや。仕事戻れ、モチベ崩すなよ」
「はい」
悪友にも諦められたこの性格に、淡々と付き合ってくれる巻田 課長の存在は、けっこう有難かった。
ともだちにシェアしよう!