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第10話「バースデー」

道隆とは友達以上恋人未満の関係が続いていた。 タイミングさえ合えば身体を重ねる事もあったが、肉体的な繋がりよりも、内面の繋がりを強く求め合う様になっていた。 あれから七年。 道隆四十五才の誕生日。 実家で誕生日パーティーの準備をしていた。父親は相変わらず仕事で忙しく、母親には日頃の感謝を込めて温泉旅館を楽しんでもらっている。 今日の為に準備は抜かり無い。一斉一代の大勝負に出る為だ。祖父は言うまでもないが、息子も難しい年頃ながら理解を示してくれた。 期待と不安で胸が張り裂けそうな中、実家のインターフォンの音が響いた。息子が玄関まで迎えに行く。徐々に足音が近づき、居間の襖が開いた。 「道隆、お誕生日おめでとう。」 少し髪の毛を伸ばし、以前よりも中性的な雰囲気になった道隆が入ってきた。ミチルの姿も美しいが、最近では道隆の放つ妖艶な色気に気が抜けない。 「どうもありがとう。嬉しいけど、何だか気恥ずかしい。」 店以外では、極端なおネエ言葉も使わなくなった。これが、本来の道隆なのだろう。 飲み物をグラスに注ぎ乾杯をする。息子と協力して作った手作り料理でもてなしたが、食事はあまり喉を通らなかった。食後は、事前の打ち合わせ通り二人きりになった。 「コーヒーでもいれるよ。」 席を立つと、冷蔵庫から小さめのホールケーキを持っていった。 「俺からのサプライズ。」 それからポケットから、指輪の入った箱を取り出し膝まずいた。ずっと言いたかったこの言葉を考える度、様々な(しがらみ)が邪魔をした。でも今は違う。 「実家にもどって畑を継ぐ事にした。パートナーとしてずっと側にいてくれませんか。」 道隆は、すでに涙をポロポロと流し何度も頷いて答えた。 「実家なんて言わないで、うちにおいでよ。拓也の両親にも、ちゃんと挨拶するから。」 「道隆、愛してる。二人で、幸せになろう。」 その後、息子も近くの農業高校に通い、引退した祖父の代わりに三人で畑に立つ事になった。 母親は何となく気付いていた様でさほど驚かなかったが、父親はさすがに厳しい反応だった。普段あまり家に寄り付かず、すでに跡取りもいる事から最終的には、承諾してもらえた。 道隆の両親には、まだまだ理解をしてもらうのに時間がかかりそうだ。それはのんびり説得していこうという事になった。 道隆との時間は、まだまだこれからも続いていくのだから…。 END

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