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進撃(いや喜劇…いやいや悲劇!?)の学会7
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300人ほどの人数が余裕で集まれそうな、大広間で行われた学会会場。金屏風に丸テーブルがあったなら、まんま結婚式会場だなと内心苦笑しながら、暗闇の中で説明されるモニターの画面に見入った。
俺としては真面目に勉強したい一心でここに来ているというのに、隣にいる御堂先輩がやたらとちょっかい出してくるのが、すっごくウザい!
教授に招かれたとはいえ本来なら入れない身分だったので、末席の壁際の席に座っていた。
逃げ場のないそこを狙い澄まして、容赦なく身体に触れてくる。この行為に対して、平手打ちや回し蹴りなどお見舞いしたいところだが、静かに勉強をする場なのでそんなことができない。
歩がこの場にいないのと反撃ができないのをいいことに、逆手を取るなんて――
「御堂先輩、いい加減にしてください。医者として、真面目に勉強しに来てるんじゃなかったでしたっけ?」
声をできるだけ押し殺しつつ、腰を撫で擦っている手の甲を強く抓って持ち上げてやった。
「真面目だよ。周防の感じる部分を探すのに、必死になってる」
何を言ってるんだという顔をして、にっこり微笑みかけてきた。呆れて摘まんでいた手を離すと、笑いながら抓られた手の甲を擦っている姿からは、まったく反省の色が見えない。
「研修医のときよりも色気が増して綺麗になったのは、自分よりもうんと年下の恋人がいるからだって分かったんだけどさ。たまには経験豊富な年上と経験してみるのも、オツなものだと思うんだ」
「すみませーん。アイツの相手をするので手が空きません」
「手じゃなくてここだろ」
俺がモニターにガン見しているのをいいことに、躊躇なくお尻に触れてきた。迷うことなくその手を、ぎゅっと握りしめてやる。さっきからこういうやり取りばかりで、勉強に集中できやしない。
御堂先輩には悪いけど、このまま黙ったままではいられない。この場に誘ってくれた教授や歩に、顔向けできなくなってしまうからね。反撃させてもらいますよ。
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