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Love too late:壊したくない距離感
――運命の人は実は二人いるらしい――
一人目で人を愛することと失う辛さを知って、二人目で永遠の愛を知る――そんなのは嘘っぱちだ。だって俺の場合、後にも先にも進まないのだから。
どうしてこんな、恋愛ばかりてしまうのだろうか。手を伸ばせば届きそうなのに、いつも出足が悪くて遅ればかり。
だから手の届かないところへ行ってしまう――
***
俺の病院に急患を持ち込んだ、同級生の桃瀬とその患者が、仲良く並んで挨拶してくれた。
「悪かったな、大人の急患持ち込んで」
「本当に有り難うございました。死にそうなくらい具合が悪かったのに、一気に治せちゃうなんて、すごいです!」
目と目を合わせて、微笑み合いながら言う、そんなふたりの仲のよさ――なるようになったって感じだな、うん。
目の前のふたりにつられるように目を細め、ニッコリと微笑み返してやった。まさか何十年前の恋が叶った瞬間に、立ち会うことになろうとは、夢にも思わなかった。
あ、でも……何となくだけど、当たり前のような奇跡にも感じる。桃瀬が心の奥底で無意識に、ずっと彼を想っていて。彼に似たような相手ばかりを恋人にしていた、そんな気がする。
だから俺がどんなに想っても、アイツの好みじゃないし、ただの親友なんだ。どんなに手を伸ばしても、けしてこの想いは届かない。
病院を去っていくふたりの後姿に、そっと手を伸ばした。
もう何度目だろうか……溢れ出しそうな気持ちをぐっと噛み殺して、桃瀬が他の誰かと歩いていく姿を、こうやって眺めるのは――
燃えるような色をした夕焼けの中、影が長く伸びる。あっちは仲良くふたり分の影が伸びて重なり、俺の背中には寂しくひとり分の影。それがまるで、未来の自分の姿であるように思えてならなかった。
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