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Love too late:壊したくない距離感2

*** 「はーい。ちゃんとお口を開けないと、診てあげれないからぁ、しっかりと開けててねー」  親父が経営していた内科の個人病院を引き継ぎ、アレルギー専門の小児科医院に華麗な転換をした俺、周防 武(すおう たけし)  世の中、少子化と騒がれているけれど、その一方でいろんなアレルギーを持つ子どもが、たくさんいるのも事実。故にお陰さまで、病院は大変繁盛していた。 「すおぅせんせえ、何か、どんだけーの人の喋り方に似てる。おもしろい!」 「でしょ、でしょー。どんだけー!」 「スミマセン、子どもが変なことを言ってしまって……」    患者のお母さんが、とても済まなそうな顔をしたことが、逆に申し訳なく思ってしまう。顔の前で右手を高速ワイパーのように振り、何でもないことを、ここぞとばかりにアピールしてあげた。 「いいんですよ、たいしたことじゃないですし。お子さんがこうやって、元気に笑っていることが一番です」  俺は喜んで、ピエロの役を買って出ているだけ。忙しさの中に身を置き、バカなことをやって、余計なことを考えないようにしているだけなんだ。その中でむしろ俺の方が、患者の子どもたちに癒されてる気がしていた。  純真無垢な笑顔を見るたび、そう思わせられる毎日―― 「すおぅせんせえのお薬のおかげで、息をするのがすごく楽になったよ」 「そっかー、胸の中のばい菌がいなくなったからだよ。でもちゃんと最後まで、出したお薬飲んでねー」 「はぁい。頑張って飲むね、ありがとう!」 「お大事にー!」  診察室から出て行く親子連れを、作り笑いできちんと見送ってから、さっきまでの診察内容をカルテに記録する。  カルテにはこれまでの病歴などが残るけど、俺の心の中は桃瀬と出逢った高校時代で、時が止まっていた。    ――何も上書きされない。ただの友達でいる、俺たちの関係――  桃瀬と出逢ったきっかけは、この病院がはじまり。親父が個人病院をここに開院した関係で、高校を編入したからだった。

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