64 / 128

ほろ苦いプリン

※【ピロトークを聴きながら】後半部分に出てきた内容を元に、SSを書きました。 あんだけ、毛嫌いしていた桃瀬と仲良くなった太郎。それを見て周防先生は不機嫌になったのであります。さてさてここから、美味しい話が展開していきますよ。 *** 「どうして桃瀬と仲良くなれたんだ?」  疑問に思ったことを仕事が終わって、自宅に帰ってから、出会い頭で訊ねてみる。すると、バツが悪そうな表情を浮かべ、口をパクパクした太郎。何だっていうんだ、一体…… 「言えないのか?」 「そんなことないんだ。ただ何ていうか、勉強を見てもらっているうちに、自然と打ち解けた、……みたいな」  キョロキョロと、目を泳がせながら言う。  アヤシイ――もしかして、何か物で買収されたとか?  例えば太郎の好きな、涼一くんオススメのプリンだったりして。  本の出版記念で、お祝いにたくさんプリンを貰ったのはいいけど、桃瀬と一緒でも食べきれない量だとかで、俺のところに持ってきたことがあった。  それをふたりで食べたとき―― 「うんめぇ!! 今まで食べたプリンの中で、最高ランクの美味さだよ、このプリンっ」  そんなことを言ったので、恐るおそる食べてみたのだが。 「甘い……」  やはりプリンはプリンなのである、故に甘いワケで。  しかめっ面しながら、舌の上でその甘さを堪能していると―― 「うっわー、このカラメル絶妙!! ちょびっとだけほろ苦い感じが、プリンの甘さを引き立ててるっ」  くーっとスプーンを握りしめ、感動してる太郎を呆れた顔で見つめつつ、褒め称えたカラメルをすくって、口に運んでみた。 「これは――」  舌の上に乗っていた甘ったるいモノが、瞬く間に消え失せ、じわりとほろ苦さが沁み込んでくる。太郎が指摘したとおりの、丁度いいほろ苦さ。  ――これは美味い!  プリン本体を避けながら、カラメルだけすくい取り、それだけをすべてなくして、太郎の目の前に置いてやった。 「それ、やるよ」 「マジで? ラッキー」 「その代わり、お前が手にしてるのを俺によこせ」  言いながら手を伸ばすと、不思議そうな顔して首を傾げる。 「もしかしてタケシ先生ってば、俺と間接チューがしたいとか?」  その言葉に、ガックリとうな垂れてみせた。 「このバカ犬っ! そんなの望んでないってば。俺は甘いのが苦手だから、底にあるカラメルしか食べられないんだよ」 「そのクセ、顔が赤くなってるんだよなぁ。見苦しいウソ、ついちゃって」 「ウソじゃない! いい加減にプリンよこせよ」  イライラしてるから、きっと赤くなってるんだ、そうに違いない。  不機嫌丸出しの俺の目の前に、静かに置かれたプリン。 「なーんか俺たちって、このプリンみたい」 「どこがだよ?」  置かれたプリンを手にして、カラメルを掬うべく、スプーンを入れた。 「カラメルがタケシ先生で、プリンが俺。そんな感じじゃね?」  なかなか面白いことを言ってくれたな。確かに太郎のムダに甘いところなんて、ソックリかもしれない。 「一度に二度美味しい俺たちの恋は、プリンのように甘く、ほろ苦いのである、まる」 「何、解釈つけてんだ。さっさと食べろよ」 「はーぃ、あり難く戴きます」  そんなやり取りをした、いわくつきのプリンで桃瀬が、太郎と仲良くなるのに買収したとしたら―― 「……いいや。具合の悪い涼一くんを背負ってきてたんだから、プリンなんて持っていなかったはず」  じゃあどうして、いきなりふたりが、仲良くなったというのだろう? 「俺がムチばかり振ってるから、桃瀬がアメで餌付けした……だけどアメひとつで簡単に、太郎は手懐けられないって」 「何、ひとりでブツブツ言ってんだよ、タケシ先生」 「お前がどうして桃瀬と仲良くなったのか、推察してんだ。どうせ俺が聞いても、頑固なお前のことだ、教えてくれないだろう?」  両腕を組んで見上げると太郎は、うーんと唸ってから―― 「教えてあげてもいいけど、ひとつ条件があります」 「何だよ?」 「向こう3ヶ月間、俺の誘いを断らないこと!」  嬉しそうに告げた言葉に、思いっきりしかめっ面をして、振りかぶり殴ってやった。 「あだっ!!」 「お前の誘いを全部受けてたら、身体が壊れちまう。もう知らん!」 「え~っ、知りたくないの?」  知りたいさ。すっごく、知りたいけど―― 「バカ犬の行動からいろいろ推理して導き出すのも、悪くないと思ったんだ」  これからはずっと、一緒にいるワケなんだし。 「……その内、イヤでもバレるだろうな。タケシ先生と一緒に、過ごしていくんだから」  突然抱きしめたと思ったら、右目尻にちゅっと、音の鳴るキスをした太郎。 「っ…こらっ! いきなり、じゃれつくなっ」 「夕飯の前に、デザート食べていい?」  頬を摺り寄せて、耳元でアヤシク聞いてきた言葉に何を意味するのか、すぐに理解してしまった。 「俺はデザートじゃないよ、甘くないんだから」 「俺にとっては、美味しいデザートだし。だってタケシ先生は、カラメルだもんね」  腰を抱き寄せられ、強引にキスをしてくる。 「んんっ…やめ……」 「絶対に止めない。桃瀬と俺のことヤキモチ妬いて、ふてくされたタケシ先生に、俺がどんだけ想ってるか、徹底的に教えてあげたいから」 「なっ////」 「お互い、心も身体も裸になって、絡めあえたらいいなぁ」  まったく、何、言ってんだか―― 「相変わらず胸焼けがすること、言いやがって。カラメルと絡めるを掛けたんだろうけど、全然響かなかったぞ」 「とか何とか言いつつも、顔が赤いままだよ、タケシ先生」  いそいそと俺のネクタイを、嬉しそうな表情を浮かべ外していく太郎を、仕方ないなと思いながら見上げてやる。  ほろ苦いことばかり言ってしまっているけれど、俺から甘い言葉を吐いたら、どんな反応してくれるんだろうか?  ――ってダメだ。  つけ上がるのが目に浮かぶ、やめておこう!  気になることは多々あったが、それは置いておいて。  太郎がくれる甘さに、身をゆだねることにした――  めでたし めでたし(・∀・)

ともだちにシェアしよう!