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ほろ苦いプリン
※【ピロトークを聴きながら】後半部分に出てきた内容を元に、SSを書きました。
あんだけ、毛嫌いしていた桃瀬と仲良くなった太郎。それを見て周防先生は不機嫌になったのであります。さてさてここから、美味しい話が展開していきますよ。
***
「どうして桃瀬と仲良くなれたんだ?」
疑問に思ったことを仕事が終わって、自宅に帰ってから、出会い頭で訊ねてみる。すると、バツが悪そうな表情を浮かべ、口をパクパクした太郎。何だっていうんだ、一体……
「言えないのか?」
「そんなことないんだ。ただ何ていうか、勉強を見てもらっているうちに、自然と打ち解けた、……みたいな」
キョロキョロと、目を泳がせながら言う。
アヤシイ――もしかして、何か物で買収されたとか?
例えば太郎の好きな、涼一くんオススメのプリンだったりして。
本の出版記念で、お祝いにたくさんプリンを貰ったのはいいけど、桃瀬と一緒でも食べきれない量だとかで、俺のところに持ってきたことがあった。
それをふたりで食べたとき――
「うんめぇ!! 今まで食べたプリンの中で、最高ランクの美味さだよ、このプリンっ」
そんなことを言ったので、恐るおそる食べてみたのだが。
「甘い……」
やはりプリンはプリンなのである、故に甘いワケで。
しかめっ面しながら、舌の上でその甘さを堪能していると――
「うっわー、このカラメル絶妙!! ちょびっとだけほろ苦い感じが、プリンの甘さを引き立ててるっ」
くーっとスプーンを握りしめ、感動してる太郎を呆れた顔で見つめつつ、褒め称えたカラメルをすくって、口に運んでみた。
「これは――」
舌の上に乗っていた甘ったるいモノが、瞬く間に消え失せ、じわりとほろ苦さが沁み込んでくる。太郎が指摘したとおりの、丁度いいほろ苦さ。
――これは美味い!
プリン本体を避けながら、カラメルだけすくい取り、それだけをすべてなくして、太郎の目の前に置いてやった。
「それ、やるよ」
「マジで? ラッキー」
「その代わり、お前が手にしてるのを俺によこせ」
言いながら手を伸ばすと、不思議そうな顔して首を傾げる。
「もしかしてタケシ先生ってば、俺と間接チューがしたいとか?」
その言葉に、ガックリとうな垂れてみせた。
「このバカ犬っ! そんなの望んでないってば。俺は甘いのが苦手だから、底にあるカラメルしか食べられないんだよ」
「そのクセ、顔が赤くなってるんだよなぁ。見苦しいウソ、ついちゃって」
「ウソじゃない! いい加減にプリンよこせよ」
イライラしてるから、きっと赤くなってるんだ、そうに違いない。
不機嫌丸出しの俺の目の前に、静かに置かれたプリン。
「なーんか俺たちって、このプリンみたい」
「どこがだよ?」
置かれたプリンを手にして、カラメルを掬うべく、スプーンを入れた。
「カラメルがタケシ先生で、プリンが俺。そんな感じじゃね?」
なかなか面白いことを言ってくれたな。確かに太郎のムダに甘いところなんて、ソックリかもしれない。
「一度に二度美味しい俺たちの恋は、プリンのように甘く、ほろ苦いのである、まる」
「何、解釈つけてんだ。さっさと食べろよ」
「はーぃ、あり難く戴きます」
そんなやり取りをした、いわくつきのプリンで桃瀬が、太郎と仲良くなるのに買収したとしたら――
「……いいや。具合の悪い涼一くんを背負ってきてたんだから、プリンなんて持っていなかったはず」
じゃあどうして、いきなりふたりが、仲良くなったというのだろう?
「俺がムチばかり振ってるから、桃瀬がアメで餌付けした……だけどアメひとつで簡単に、太郎は手懐けられないって」
「何、ひとりでブツブツ言ってんだよ、タケシ先生」
「お前がどうして桃瀬と仲良くなったのか、推察してんだ。どうせ俺が聞いても、頑固なお前のことだ、教えてくれないだろう?」
両腕を組んで見上げると太郎は、うーんと唸ってから――
「教えてあげてもいいけど、ひとつ条件があります」
「何だよ?」
「向こう3ヶ月間、俺の誘いを断らないこと!」
嬉しそうに告げた言葉に、思いっきりしかめっ面をして、振りかぶり殴ってやった。
「あだっ!!」
「お前の誘いを全部受けてたら、身体が壊れちまう。もう知らん!」
「え~っ、知りたくないの?」
知りたいさ。すっごく、知りたいけど――
「バカ犬の行動からいろいろ推理して導き出すのも、悪くないと思ったんだ」
これからはずっと、一緒にいるワケなんだし。
「……その内、イヤでもバレるだろうな。タケシ先生と一緒に、過ごしていくんだから」
突然抱きしめたと思ったら、右目尻にちゅっと、音の鳴るキスをした太郎。
「っ…こらっ! いきなり、じゃれつくなっ」
「夕飯の前に、デザート食べていい?」
頬を摺り寄せて、耳元でアヤシク聞いてきた言葉に何を意味するのか、すぐに理解してしまった。
「俺はデザートじゃないよ、甘くないんだから」
「俺にとっては、美味しいデザートだし。だってタケシ先生は、カラメルだもんね」
腰を抱き寄せられ、強引にキスをしてくる。
「んんっ…やめ……」
「絶対に止めない。桃瀬と俺のことヤキモチ妬いて、ふてくされたタケシ先生に、俺がどんだけ想ってるか、徹底的に教えてあげたいから」
「なっ////」
「お互い、心も身体も裸になって、絡めあえたらいいなぁ」
まったく、何、言ってんだか――
「相変わらず胸焼けがすること、言いやがって。カラメルと絡めるを掛けたんだろうけど、全然響かなかったぞ」
「とか何とか言いつつも、顔が赤いままだよ、タケシ先生」
いそいそと俺のネクタイを、嬉しそうな表情を浮かべ外していく太郎を、仕方ないなと思いながら見上げてやる。
ほろ苦いことばかり言ってしまっているけれど、俺から甘い言葉を吐いたら、どんな反応してくれるんだろうか?
――ってダメだ。
つけ上がるのが目に浮かぶ、やめておこう!
気になることは多々あったが、それは置いておいて。
太郎がくれる甘さに、身をゆだねることにした――
めでたし めでたし(・∀・)
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