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第40話
奥深く貫かれ苦しさに顔が歪む。
思わずついたため息に重なるように智紀さんの熱い吐息が唇に吹きかかった。
「俺の食いちぎられそうなくらい熱い」
千裕のナカ、と囁く智紀さんに普段の爽やかさなんて欠片もない。
まだ動く気配のない硬いものをリアルに感じながら圧迫感の中に紛れる妙な―――快感にまたため息が落ちる。
「……っ……智紀さんのほうが……熱いですよ……」
貫かれた瞬間はいつも思う。
太い杭が逃げられないように俺の体内に打ち込まれてるように。
回数を重ねるごとに慣れていく行為だけど、回数を重ねるごとに自分でもおかしくなっていってるのがわかる。
「そう?」
笑う智紀さんのせいで、俺はおかしくなっていってる。
男同士なんて想像もしたことがなかった数カ月前。
この人に出会って流されるまま身体を開かれて、セックスなんてただ淡泊に欲を吐き出せば終わりだったそれまでを覆されるほどの濃密で全部塗りかえられていくような感覚。
「でも千裕の中のほうが熱いよ。俺のを離さないようにぎゅうぎゅう締め付けてるし、熱くて溶かされそうだし」
からかうように言いながら悪戯に指が脚を撫で、すでに完勃ちしている俺のモノに触れて離れる。
じれったい、ていうか絶対じらしてるだろこの人。
いつもよりは性急に繋がって、なのにやっぱり動く気配がない。
「……もともと狭い場所……ですから」
挿入されてるだけの状態。
段々と圧迫感は薄れていく。
その分、逆に自分の中が蠢めくように疼いているのを強く感じた。
―――どれだけ慣らされてるんだよ。
内心自分に呆れてため息をつきたくなる。
「そーだね。俺しか知らないちーくんのココは本当に狭い」
「……変態くさいですって」
「変態でいーよ。俺、ココ好き」
指が結合部の縁をなぞっていく。
「……オッサン……」
呟けば、ふは、と吹きだすように笑ってだけど動かない智紀さんに手を伸ばした。
俺の脚を抱える手を掴む。
なに、と言葉のかわりに目が尋ねてくる。
「……動かないんですか」
「ちーくんの中に俺をなじませてる最中」
「……とっくに馴染んでますよ」
「動いてほしい?」
ほんっとうに、性格悪いよな。
ため息をついた。
だけどそれはひどく熱っぽくて、自覚できる程に物欲しげな響きがあった。
「……動いて下さい」
「それおねだり?」
「……そう……ですよ」
そうなんだ?
楽しげに口元を緩めて、ぐ、と腰をさらに押し付けてくる。
体重をかけ前のめりになって智紀さんは俺の目をまっすぐ見つめてきた。
「動いてほしい?」
「―――……ほしいです」
性格悪すぎる。でも、じれったくて焦らされて、俺もまっすぐに見つめ返した。
俺の返答に満足したのか。
ようやく智紀さんは「いっぱい突いてあげよっか? 千裕」って言いながら、動き出した。
「っ、あっ……」
突かれるたびに漏れてしまう声に手の甲を押し当てる。
眉を寄せて快感を耐えようとしてるのに、そんな俺を薄く笑いながら強弱を変え時折焦らすように浅くしたりしながら律動している智紀さんに俺の身体は従順に焦らされただ受け入れている。
「千裕、きもちいい?」
奥のほうまで穿ちながら艶っぽい目を悪戯気に光らせ智紀さんが囁いてくる。
出会った最初のころはやっぱり同性同士ってのが一番戸惑ったし、それなのに快楽を得てしまうのもすごく困惑した。
でも会う回数が増えて、触れ合う回数が増えて―――慣れたのか流されきってしまったのか今では与えられる快感を逃さないようにしてしまってる俺自身がいる。
「……きもちいいです、よ」
じゃなかったらシないし、と最後はほんの少し残った強がりを呟けば智紀さんが吹き出しながら一気に俺の中から半身を引き抜いた。
「ンっ」
広げられていた自分の後孔が太いものがなくなり喪失感に疼く。
すぐまた挿れる様子もなくかわりに智紀さんは俺の背に手を回して起き上がらせる。
反対に自分は寝転んだ。
「ちーくん。自分で挿れてみな」
智紀さんに跨った状態の俺。
さっきまで体内に挿っていた熱く硬い智紀さんの半身が眼下にある。
「……っ」
騎乗位はしたことあるけど、挿れたまま体勢が変わってとかで自分で―――というのは初めてで戸惑う。
羞恥に首のあたりが熱くなるのを感じるけど、躊躇ったのはほんの数秒だったと思う。
「……今日だけですから」
それも強がりでしかない。
触れられてもないのに先走りをだらだらとこぼしている俺の半身と、そしてもの足りないと疼く後孔に俺は熱を求めるように膝立ちした。
太い智紀さんのものを掴み後孔に当てる。
「……っく……」
先端を挿れ、でも一気に腰を落とす勇気はさすがになくてゆっくりと腰を落としていく。
また埋め尽くされていく感覚に背筋にぞくぞくとしたものが走り抜ける。
智紀さんの笑いと欲に濡れた眼差しにさらされながら、自分のイイ部分に擦りつけるようにしながら全部飲み込んだ。
「ぁ……っ」
「動いていいよ」
優しい声音、だけど、言ってることは別に優しくない。
なのに俺の腰は自然と動き出す。
自分で上に乗ってするのはまだ数回だけどやっぱり慣れない。
悪戯に俺の太腿に触れてくる智紀さんの指に眉をきつく寄せながら漏れる吐息をこらえて上下する。
「っ……」
急激な快感を得たい反面、ペースをあげれば我を忘れてしまうそうな気もして最初はセーブしていたけど、結局気付けばペースはあがっていた。
ぐちゃぐちゃと結合部から響く水音。
後孔から脳まで突き抜けるような快感。
這いあがってくる吐精感に無意識に半身に手を伸ばして自分で扱いていた。
「―――うまくなったよね」
夢中になって絶頂を追っていると智紀さんの声がして少しだけ我に返る。
ぼんやりとした視界に智紀さんが映って、俺は咄嗟に返事ができずに目でなにがと問う。
口角を上げる智紀さんが俺の手に手を重ねてくる。
「ほーんと、俺を煽るのがうまくなったよね。千裕」
そして扱いていた半身、その鈴口に爪を立ててきた。
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