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第57話

静かな玄関に俺の荒い呼吸だけが響いてる。 全部を絞り出すように力をなくしていく俺のを最後まで扱いていた手が離れていくのを視界にいれながら、吐精したのにまだ燻る熱に智紀さんの肩に額を預けた。 「足りるかなぁ」 腰をなぞる手と呟きにそっと見上げれば俺が吐き出した白濁をぺろりと舐める智紀さん。 「なにしてるんですか」 なに舐めてんだ、この人は。 呆れながらも、さっきの言葉の意味を悟って目を泳がせる。 その間にも白濁を塗りこめるように俺の後孔に指が触れてきた。 「んっ」 ゆっくりと指先が入り込んでくる。 立ったままの態勢のせいかそれだけでも圧迫感がいつもよりあって、それを逃すように息を長く吐き出す。 「ちーくん」 目元にキスが落ちてきて視線をあわせると、智紀さんが「俺につかまって」って言ってきて、えっと思った瞬間には「よいしょ」と横抱きにされた。 慌てて首に手をまわしたけど身動ぎする。 「たいして力ないから暴れたらだめだよ」 落としたら大変、と、服はちゃんと後で綺麗に洗うから、と白濁がきっと服に付いたんだろう、この状況で細かい気配りを見せながら智紀さんはいわゆる御姫様だっこで俺を寝室に運んだ。 「―――っわ」 でもベッドへは無遠慮に放り投げられて、スプリングに小さく身体をバウンドさせているとすぐに智紀さんが俺の脚を大きく開かせて間に入ってくる。 そして一気にズボンと下着を脱がせると、いつの間に取り出したのかローションを垂らしてきた。 それを指にまとわせながらさっきよりも容赦なく後孔に指を突き立てられた。 ローションのお陰で痛みはないし―――圧迫感はさっきよりも薄れ、それに、内壁をひろげるように動く指にぞくぞくと腰が震えた。 俺の身体はいつの間にこんな風になったんだろ。 ぐちゅぐちゅと水音をたたせながら、智紀さんは早々に二本目の指を追加しながら後孔を侵していく。 「……ん、っ、は」 指は的確に前立腺を狙って動いている。 さっきイったばっかりなのに、俺のは再び勃ちあがっていた。 「千裕」 だらしなくのけぞりながら与えられる快感に震えてればぐっと腰を浮かされ、指が三本になり激しく後孔を掻きまぜた。 「……な、ん……ですかっ」 半身を弄るのとはまた違う快楽。 半年前までは知らなかったのに、いまはもう十分というほどに身体に染み付いてしまってる。 「もう挿れていい?」 俺、限界なんだけど―――。 口元を歪める智紀さんに、俺は小さく頷く。 同時に後孔にぬるりとしたぬめりと硬い感触が宛がわれた。 ぐち、と孔に先端がめりこんで、圧迫感に呼吸が浅くなる。 だけど、もう知ってるから、後孔は喜んで受け入れるようにひくつくのを感じた。 限界っていったのにゆっくりと侵入してくるソレにむずがゆさを覚えて身をよじれば、脚をつかむ腕に力がこめられた。 視線が絡まって、目を眇め俺を見つめる智紀さんに、一瞬イヤな予感がして。 あ、っと思った瞬間には一気に深く突き刺された。 「う、っ、あ」 衝撃に頭の中が真っ白になった。 びくびくと痙攣する身体。 なのに、そんな状態の俺を気にするでもなく最初から容赦なく激しく腰を打ちつけてくる。 「っ、ちょ……っ、あっ、んっ」 何も考えられないまま揺さぶられながら強すぎる快感に智紀さんの腕を掴む。 ぐりっ、と前立腺を狙って擦りあげながら深く穿ち、智紀さんが覆いかぶさるように俺の身体の両端に手をつく。 上から俺を見下ろす目を見返そうとしたけど、視界が揺れてのけぞることしかできなかった。 「ごめんね、千裕。俺もさんざん焦らしプレイされて一カ月我慢してたから、今日は手加減できないかも」 焦らしプレイって、なんだよ。 と、思うのは一瞬で、すぐに思考は快感の渦に飲み込まれた。 ペースを落とすことなく、ただひたすら揺さぶられ、背中に回ってきた手に抱きかかえられるようにして起こされた。 智紀さんの膝の上で下から突き上げられる。 「千裕」 少しだけ緩くなった動き。 頬を撫でてくる手が額から伝い落ちる汗を拭って、そのまま髪に触れて後頭部を引き寄せる。 唇が動くたびに触れそうになるけど、触れない。 視線だけは絡みとられてしまったようにぶれることなく重なっているけど。 「ちーひろ」 と、甘やかす声音に眉が寄ってしまう。 でもすぐに、緩んでしまう。 「好き」 悪戯気に、そのくせ熱を孕んだ目で言われたら、もうダメだ。 背中をなぞる指とガンガンと突き上げられるたびに声が乱れて息が飛んで。 それでも必死にしがみついて、 「―――……俺も……っ」 そう言って。 俺からキスした。 触れるだけじゃない、大人のキス。 やり方はこの人に教えられたキス。 「んっ……は、っん」 智紀さんの咥内で舌を動かす。下から送られる快感にキスが途切れそうになったら促すように舌を絡められて夢中になって返した。 「……やばいね、マジで」 酸欠になってしまいそうなくらいにキスしあって、また俺はベッドに沈められた。 千裕キスうまくなりすぎ、と唇を舐めながら妖艶に笑う智紀さんは俺の脚を抱え直してまた律動をはじめる。 もう限界は近く俺のものはいつ爆発してもおかしくないくらいに張りつめてるし、後孔からわきあがる快感も目の前をチカチカさせるくらいに強くなってた。 「ッ、ぁ……っ、もっ……」 イク、と漏らせばさらに肉同士がぶつかり合う音が激しさを増して。 「……っあ、っん……ッ」 身体が激しく痙攣し、視界がスパークした。 ぎゅうっと収縮する後孔で智紀さんのものが一際膨張するのを、呻く艶のある声が落ちてきたのを絶頂の端で感じた。 ***

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