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 ―― 身体と愛と涙味の……(10)

 昨日から色々あり過ぎて……、透さんに逢ったのがもう随分前のような気さえしてくる。  最後に逢ったのは、たったの3日前……。 俺が罰ゲームで女装して透さんと夜景を見たあの夜。  ―― 彼氏じゃないのなら、義理立てする必要もない。  昨夜、みっきーに言われた言葉が頭を過ぎった。 『彼氏』…… 確かに恋人ではなくて、身体の関係はあるから友達でもない。  なら、やっぱりセフレと呼ぶのが多分正しいんだと思うけど。  なのに、飲みすぎて友達の家に泊まったとか、そんな嘘のメールをしただけで心が痛む自分。  そのメールのやりとりをした直後に透さんの姿を見かけて、透さんは気が付いてませんようにって、願う自分。  昨夜、みっきーと関係を持ってしまった事が、透さんに対して後ろめたさで頭の中がいっぱいで……。    ―― これって、まるで……。  まるで…… その後に続く言葉を心の中で呟いてみると、切ないような不思議な感情を覚える。  ―― だけど…… 透さんも昨日は……。  彼女と腕を組んで、仲良さそうに歩いて行く後ろ姿を思い出して、今考えていた事を振り払うように、俺はブンブンと思いっ切り頭を横に振った。  ―― そうだ…… 俺が後ろめたさを感じる理由なんて、ひとつも無い。 透さんと俺は恋人なんかじゃないんだから。  だけど何だろう……。 そう考えるのが一番ラクな筈なのに…… なんでこんなにへこんでしまうんだ俺。 「どうしたの? さっきから、思い切り首振ったり、地面にのめり込みそうな程沈んでたり?」 「あ…… ?」  言われてタクシーの中だって事を思い出して、隣を見上げた。  みっきーは静かに微笑んで、俺の頭を自分の肩に乗せるように引き寄せる。 「すぐに着くけど、それまで少しでも眠りなよ」  みっきーにしては優しい言葉だな…… なんて思いながら、タクシーの心地よい揺れと疲れも手伝って、みっきーの肩に頭を預けたまま重くて仕方のない瞼を閉じた。

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