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―― 身体と愛と涙味の……(28)
額を俺の肩に押し付けて、顔は俯いているから見えないけれど、俺の肌に残る無数の痕に透さんの表情が曇っていくのが、はっきりと分かった。
「ここも愛してもらった?」
金属音を立てながら、ゆっくりとベルトが外されて、ジーンズの前を寛がせた透さんの手は、そのまま下着の中へと滑り込む。
「……ッ」
こんな状況だというのに、もうさっきから形を変えていた半身が、この先を期待して更に硬度を増した。
透さんは、ずっと俺の肩に顔を埋めたままで、目を合わせてはくれない。物腰は静かで優しいけれど、透さんから滲み出る空気は凍てつくように冷たい……。
下着の中に忍ばせた透さんの手は、俺の中心に指を絡め、焦れる程の緩さで上下させている。俺はもっと刺激が欲しくて、腰が自然に動きそうになるのを必死に堪えていた。
焦らすように上下させている手はそのままに、透さんのもう片方の手が後ろに回り、双丘の谷間を指で辿るように触れられて、体が震えた。
「……あ……」
指はその奥へと進み、入り口を確かめるように撫でられて思わず声を漏らせば、透さんは俺の耳元に冷めた声で囁いた。
「気持ちよかった?」
「……え?」
「あの人のセックス、どうだった?」
「……」
抑揚のない声。透さんの言葉は胸の奥を容赦なく抉る。返す言葉なんて見つからなかった。
また俺の肩に顔を埋めて、透さんの両手は下着の中でじれったく動く。
「……ァ……とっ……る、さんっ……」
入り口を僅かに触れる緩い刺激がもう堪らなくて、我慢できなくて、思わず透さんの指にそこを擦り付けてしまう。
昨夜、何度もみっきーを受け入れたそこは、柔らかく透さんの指に吸い付いて、物欲しげにヒクついているのが自分でも分かった。
「……足りない?」
そう言うと、今まで入り口辺りを焦らすように動いていた長い指が、ローションも何も付けずに、いきなりツプッと挿ってくる。
「……あッ……ぅ……ッ」
少しの痛みが後孔に走って、小さく呻き声が漏れた。
「……柔らかいね」
「……ッ!」
「少ししか触っていないのに、こっちはもうこんなに濡れているし」
「…… ぁ、」
見なくても分かっていた。俺の半身は、焦らされる刺激だけで、もう蜜口から透明の液体をだらだらと流してしまっている。
「好きなんだね、セックスが」
言われた言葉に言い返すことも出来ずに、カッと顔が熱くなった。
「抱いても……いい?」
俺の返事を待たずに、透さんは先走りを指に絡めると、後孔にその僅かな湿り気を擦り付けていく。
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