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—— 身体と愛と涙味の……(30)
それって……。
俺は、透さんに抱かれながら、みっきーに抱かれているつもりでいると勘違いしているって事?
俺が今、顔を見たいのは、透さんじゃなくて、みっきーだろって言っているのか?
「っ……、ちっ……ちが、うッ」
身体を捩って振り返ろうとすれば、それを阻止するように透さんが顔を俺の項に埋めるから、顔を見る事もできない。
「と、おるッさ……ぁ、ぁッ、」
透さんは、俺の左足の膝裏を掬い上げ、もっと深いところを突き上げる。
シンクに凭れさせている体が突かれる度にワークトップにずり上がった。
「何が、……違うっ? ……」
深い処を突き上げられる衝撃に、シンクに突いた腕を伸ばし背中を反らせば、崩れそうになるバランスを透さんの腕が胸に回って支えた。
「あ、の人は、そ、んなんじゃぁッ、ないッ」
そのまま支えている手が胸の尖りを摘みあげると、ピリッと電気が走るような刺激が身体を駆け抜けて、必死に訴える言葉は途切れてしまう。
「あ、……ぁあッ」
「好きな人じゃ……っ、ない、って、こと?」
透さんの問いに、俺は何度も無言で頷いた。
律動に合わせて、密着した透さんの太股と俺の双珠が擦れる刺激と、前立腺を抉られる快感に、腰の奥がじんじんと熱を持ち蕩けていく。
触られてもいない半身は脈打って、水位が限界まで上がってくる。
「あ、も……っ、イクっ、イ、ッく、ん……!」
透さんの動きが速くなって、高まっていく快感が頂点に届くとともに、瞼の裏に閃光が走る。
「——くッ……」
キッチンのキャビネットにパタパタと音を立てながら白濁が飛び散っていく。 それと同時に俺の身体の奥深くに、透さんの熱が広がるのを感じた。
荒い息を吐きながら、弛んだ身体をシンクに預けていた俺の背中に、透さんが体重をかけてくる。
背中に感じる透さんの重みと、スーツの下の汗ばんだ肌。 熱を孕んだ荒い息遣い。
そして、耳元に冷たい空気を纏った声が落とされた。
「……そう……、相手は、誰でも……、いいって…… 事だね……」
「…… なッ?……ン、っ……」
透さんの言ってる事が解らなくて、身を捩って透さんから身体を離すと、まだ中に挿っていた透さん自身が、ズルリと出ていく感覚に吐息が漏れる。
内股を熱い液体が伝い落ちた。
「気持ちが良ければ、それでいいんだよね?」
「……!」
「別に悪い事じゃないよ」
スラックスのファスナーとベルトを外しただけだった服を整えながら、透さんの呟くような言葉が耳に届いて……その時、俺の中で何かが壊れたような気がした。
——そうだ。別に悪い事じゃない……。
だって今までも女の子とそう言う関係を続けていたじゃないか。
透さんの事も……、
みっきーの事も……、
今までと同じ……。
——それに……、
それに……、透さんだって! 俺と同じじゃないか。
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