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 —— 身体と愛と涙味の……(33)

 そうしてゆっくりと指を動かし続けながら、みっきーは俺が話すのを待っている。  やだな……そんな風に優しくされたら、また泣いてしまいそうなんだけど。  最後に見た透さんの、憂いを含んだ瞳が頭から離れない。  ——直くん、最後に誤解だけは解きたいから言わせてね。  俺の好きな柔らかい声で……、『最後に』って、言っていた。 「透さんの彼女と思っていた人、妹だったんだ」 「え? そうなんだ。じゃあ、障害ないじゃん。晴れて恋人になったにしては、何でそんな酷い顔してるの」  恋人になんてなれない……。だって俺、透さんに酷いこと言っちゃった。 「……もう会わないって伝えたよ」 「え?」 「いいんだ、もう終わったから」 「いいって……、透さんは何て言ってるの?」 「……わかったって……」 「直は、それで良いの?」 「……うん、すっきりしたし……。もうこれで、透さんの事で悩んだり、考えたりしないでいいんだし……」  俺の後頭部に、みっきーの大きな掌が包むように触れてきて、そのまま胸に引き寄せられた。 「……馬鹿だね、直は」  ホント、俺って馬鹿。  引き寄せられるまま顔を埋めたみっきーの胸は暖かくて、俺は目を閉じる。  ——他に好きな人がいるのに、俺を抱いたくせに……。  言わなくていい事、言っちゃって。  胸の奥が、ズキズキしてて。  俺は別に、透さんと付き合ってたわけでもなかったのに……。  哀しくないのに、哀しくて……。 「……っ……う、――ッ」  なのに、何でまた涙が出るかな。 「……だからもう、俺にしとけば?」  笑いながらそう言って、みっきーがポロポロ零れる涙を指で拭ってくれる。  なんでも冗談っぽくしちゃうのは性格なんだろうけど、本気で言ってくれてるんだってことは、俺にもちゃんと分かってる。  でも……。 「……やだよ」  わざと、ふてくされ気味に断ったのに、みっきーは可笑しそうにクスクス笑う。 「何で、嫌なの。こんなに優しいのに」 「みっきーの事好きだけど……、やっぱりその好きの種類は違うと思うし……」 「あれ? 俺の事は違うって判るんだね。透さんの好きは、どの好きか分かんないくせに」 「みっきーの事も、分かんないよ」 「なんだぁ? じゃあ、まだ俺にもチャンスはあるって事?」 「俺、好きの種類がどれなのか分からないのに、簡単にエッチしたりするのはもうやめるって事」 それは、透さんに言われて分かった事。 本当は、前から薄々気が付いていたのに……。 ずっと、知らないふりをしていた。

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