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—— 想う心と○○な味の……(7)
「会えなくなるのは勿論寂しいけど、二度と会えないって……なんで?」
知り合ったばかりで、そんなに月日は経ってないけど、急にいなくなったら、それはやっぱり寂しい。
普通じゃ考えられないような衝撃的な出会いだったし、短い期間だけど、結構親密な(身体のことじゃなくて……)付き合いをしてると思うし……。
出会ってから、今までのことを振り返りながら、じっとみっきーの顔を見つめて答えを待っていれば、
「実は、前から誘われていたんだけど……」
と、なんだか言いにくそうに鼻の頭を人差し指で掻きながら、みっきーは言葉を続ける。
「……俺、メキシコに行こうと思うんだ」
「へ……?」
—— メキシコ? なんでいきなりメキシコ?
あまりも、いきなりな話に、現実味が沸かないんだけど!
「メキシコって……? そ、そりゃまた遠いね。何しに行くの?」
「飲食店をね……ファーストフード的な店をやらないかって話があるんだよ」
「へぇ~、でもなんでメキシコなの?」
「スパイシーなメキシコ料理、陽気なメキシカン、蛾の大群が俺を呼んでるんだよ」
みっきーは上を見上げ、両手を広げ、大げさ過ぎるジェスチャーで、メキシコについて熱く語り始めた。
「ちょっ、蛾の大群ってなんなの」
「ん? あぁ、見た事ないけど、友人が言ってたから」
「なにそれ……」
まぁ、みっきーらしいと言えば、みっきーらしいけど……。
「だからね、直……」
急にマジモードで、俺に向き直るみっきー。たった今、戯けていたくせに。
付いていけずに、呆気にとられている俺の足下に、何故かみっきーが跪いた。
「ちょ……、何してるの!」
驚いている俺に構わず、みっきーは跪いたまま、両手で俺の手を握りしめた。
「みっきー?」
なっ、なんだ? どうしたんだ?
みっきーが何が言いたいのか、何をしたいの、全くわかんねえ!
「だからね、直……、俺と一緒に行かない? メキシコ」
—— へ?
「な、何言ってんの、行かないよ!」
間髪入れずに、「行かない」って、言っちゃったけど、この対応で合ってるよね? 別におかしくないよね? だって、メキシコだろ? しかもそこで住んじゃうってことでしょ?
だけど、みっきーはと言うと、大げさに哀しそうな顔をして、あからさまに落ち込んでる。
「そんなに、あっさり断らなくても……」
そう言って、俺の膝に顔を埋めて泣きマネをしている……。 あ、一応念押しておくけど、泣いてるんじゃないよ、泣きマネだからね!
「あ、あのさ、みっきー?」
「俺……、行っちゃったら、本当に今度いつ帰ってこれるか分かんないんだよ?」
「うん……」
「それでも、いいんだ?」
「んーー、でも、みっきーは行きたいんだろ?」
「……そうだけど……、でも俺と離れたくない……とか、そういう風には思わないの?」
俺の膝に埋めていた顔を上げ、みっきーが上目遣いに真っ直ぐ俺を見詰めてくる。
……って、あれ? なんかホントに目がウルウルしてんじゃん。 マジで泣きそうなの?
「……んーーーー」
そりゃ、いなくなるのは寂しい。でもみっきーのやりたい事を、俺が止める訳にもいかないし。
ど、どう言ったらいいんだ? こんな時……。
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