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 —— 想う心と○○な味の……(9)

 —— もう、透さんには会えない。 二度と逢えないんだ。  そう考えると、胸の奥が痛いくらい苦しくなって、息が…… できない……。 「…… っ、」  苦しい、苦しい……、痛い……、苦しい。  透さんと、もう二度と逢えない。  そう思うだけで、身体の全部の機能が止まってしまうんじゃないかって思うくらい、苦しい……。  —— 透さんは、俺の事なんてもう忘れてしまってる……。  透さんに忘れられてしまう事が、こんなに辛いなんて考えたこともなかった。  クリスマスイブに公園で偶然出逢った事も、  一緒にケーキを食べた事も、  透さんと過ごした時間が、全て無かった事になってしまう。  ——『直くんは? どう思ってる? 俺のこと』    本当は、最初から気付いてた。 自分の気持ちに。  生クリームは、ただのきっかけで、  クリスマスイブのあの夜、公園で偶然出逢った時から……、いや、もしかしたらもっと前から。 「直っ、」    ストンと何かが心の中に落ちて、頭の中がスッキリしたように感じたら、急にみっきーの声がクリアに聞こえてきた。 「…… ぁ……、」  みっきーの指が、俺の頬に触れている。 「…… 直……、」 「…… ふぅ…… っ……」  やっと息を吐き出して、それでやっと気が付いた。 「…… 俺……、泣いて…… んの?」 「そうだよ、泣き虫め」  止め処も無く流れている涙を、みっきーが指で拭ってくれている。 「俺……、もう逢えないなんて、嫌だ……」 「誰に……? 誰に逢えないのが嫌なの?」 「…… あ……、」  透さんに……、なんて、みっきーに言えない。 「ばーか」  みっきーは、苦笑しながら俺の頭を小突く。 「痛ぇ……」  頭を押さえながら、みっきーを見上げれば、「やっと分かったか」って、言いながら笑ってる。 「みっき……、俺……」 「うん」 「透さんが、俺の事を忘れるなんて考えた事なかった」 「うん」 「透さんに、もう二度と逢えないなんて、考えた事なかったんだ」 「あーーーっもう!」  みっきーが急に大声を出したと思ったら、俺の髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き回した。  散々かき回した後、俺の頭をみっきーの逞しい胸に引き寄せて、抱きしめられる。 「俺って、めちゃいい奴だろ?」  みっきーの言葉に口元が緩んで、つい、「うん…… 惚れそうだよ」って、言ってしまった。 「だからー、俺に惚れればいいのにね、直は」 「ホントだね」  でも俺は、やっと気付く事ができた。  男同士だからって、本気で好きになる筈がないって、頑なに決め付けていた。  透さんが俺の事をどう思ってるかは分からないけど。  俺は、透さんの事が好きなんだ。  もう一生逢えない、なんて、考えただけで胸が押しつぶされそうな痛みに耐えられそうにない。  許されるのなら、もう一度逢いたい。  それでちゃんと伝えたい。  あなたのことを…… 心から想ってる。

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