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 —— 想う心と○○な味の……(10)

「行っておいでよ」  そう言って、みっきーはテーブルの上の煙草に手を伸ばし、指先で箱の上部をトントンと軽く叩いて滑り出した1本を唇に挟む。 「…… え?」 「会いたけりゃ、会いに行けば?」  会いたい……。  透さんは、もう俺の事なんか忘れているかもしれないけれど。 「でも…… 俺から連絡する手段が……」 「そんなの! 住んでる場所、知ってるんでしょ? 直接行っちゃえばいいじゃない」  —— 直接……。  そっか、そうだよな。 携帯の番号とか分からなくても、直接マンションに行けば会える。 「これから行くなら、送って行ってあげるけど?」 「みっき……」  なんでそんなに俺に優しくできるんだよ。 って思う。 「俺、みっきーの告白を断って、透さんのところに行こうとしているのに?」 「なんでかなぁー、ほっとけないって言うか…、まぁでも直の気持ちが透さんのとこにあるまま、無理やり俺のものにしちゃっても虚しいだけって言うか……」  一旦言葉を区切って、みっきーは深く肺に吸い込んだ煙を、ふーっと、音を立てながら細く長く吐き出して、「だから当たって砕けてきたら?」なんて、縁起でもない言葉を続ける。 「…… 砕けたくないけど……」  みっきーの言うように、もう彼女とか、いるかもしれない。  そんな事を考えると、俺なんかがマンションに行って、彼女とばったり…… とか、なんて事になったら…… って、不安になる。 「大丈夫、それでダメだったら、俺んとこに来ればいいんだし?」 「みっきーは、もしかして俺と透さんはもう駄目だって、確信してる?」 「ふふ~ん、どぉかな~~」  悪戯っぽく笑いながら、もったいぶった言い方するから余計に不安になるじゃんか! 「でも、うまくいくかもしれないでしょ?」 「うまくいくかな……」  多分、うまくいく確立は低いと思う。 「直と透さんがうまくいっちゃったらさ、俺ってすごいかわいそうじゃない?」 「ぷっ……」  自分で言うから、どうしてもかわいそう…… とか思えなくて、込み上げてきた笑いを我慢できずに、声を出して笑ってしまった。 「もう! 冗談じゃなくってさ……」  そう言いながらみっきーは、いきなり俺の身体を持ち上げて、今まで俺が座っていた椅子に腰掛けると、そのままその膝に俺を座らせる。 「え、ちょっみっきー!?」 「しーーっ、店に聞こえちゃう」 「…… って、なっ? 何する気!」  —— 店に聞こえたらマズイ事でもする気か?  後ろからギュッと抱きしめられて、俺は、みっきーの膝の上で、ジタバタともがいた。

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