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―― 想う心と○○な味の……(20)
***
なんだか身体に重みを感じて、瞼を開けると、太陽の光が部屋に差し込んでる。
―― 今、何時だ……。
起き上がろうとすると、頭の芯が割れるような痛みに襲われた。
―― いってぇ…頭ズキズキする……。
暫く頭を抱えた状態で、昨夜啓太と呑んだ事を思い出す。
―― 二日酔いかよ~、まじ情けない。
しかも身体全体が重い気がする。 特に腹から下に…… 違和感を感じて布団を捲ってみる。
「…… 啓太、お前何してるんだよ」
布団の下では、啓太が俺の腹に顔を埋めて、腰の辺りに抱きついて、俺の体をまるで抱き枕みたいにして眠ってる。
どうりで、下半身が動かないわけだ。
「おい、起きろよ啓太。…… つか、なんで俺らズボン穿いていないわけ?」
上はTシャツ一枚で、下は…… かろうじて下着のボクサーパンツは穿いている。
「んー?あ、おはよ直、気分はどぉ?」
―― どぉ?って…… なんか気分は最悪なんだけど……。
「なんで啓太が俺と一緒にズボン脱いで、ベッドにいるわけ?」
「おまっ、覚えてないのかよ?」
「俺が気分悪くなって、啓太が背中擦ってくれてたところまでは憶えてるぞ!」
―― 偉そうに言う事じゃないけどな!
「昨夜はお前、吐くだけ吐いたら、今度は寒いって言ってさ。 じゃあ布団に入れってベッドに連れて行ったら自分でズボンを脱いで布団に入ったんだよ」
「うん、それ普通じゃん。 んで、なんで啓太までズボン脱いで俺を抱き枕にしていたの?」
「直が、足が寒いからって俺にも布団入れって言ったんだよ」
「…… ?!」
「そんで、ズボン穿いたまま布団に入ったら、ジーンズが冷たいから啓太も脱げって言って……、そんで足を絡めてきたのは直だからな?」
「嘘だっ、俺がそんな事するわけないだろ?」
―― まったく憶えてないしっ。
「まぁ、それでも足を絡め合っていたら、温まってきてさ、俺もなんだか気持ちよくなってきて、そのまま寝ちゃったって事かな」
―― 事かなって、啓太も憶えてないのかよ!
「なあ、啓太…… 俺ら、何もなかった…… よな?」
俺がそう問えば、啓太の顔が赤くなった。
「え? なに顔赤くしてんの。 マジ、なんかした?」
「あるわけねーだろが! 俺も直も酔っ払ってたから、すぐ寝たよ!」
「そうか…… よかった……」
でも、なんだか身体が怠いんだよな。 頭痛は二日酔いだろうけど……。
「っくしゅんッ!」
啓太の体が離れたら、なんだか寒気がした途端、くしゃみが出た。
「直? お前、風邪ひいたんじゃねーの? 昨夜もかなり寒がってたぞ?」
―― え、え?そうかな……。
ぼーっと考えてると、俺の額に、啓太が手のひらを充てた。
「なんか熱いぞ、体温計は?」
「あー、どこだっけな……」
だからちゃんと片付けないから、必要な時に使えないだろ? って、啓太は怒りながら自分の部屋から体温計を持ってきてくれた。
ピピッ
「38度か……、病院行くか?」
「うそ…… 熱そんなにあんの? でも俺、ちょっと眠りたい」
「じゃあ、氷枕持ってきてやるから、寝てろ」
「うん、ごめんな」
昨日寒い中、長い時間、外にいたからかな。 啓太にも、迷惑かけちゃうな……。
今夜にでも、透さんのマンションに行ってみようと思っていたのに……。
本当、タイミング悪いよ、俺。
結局、その後も熱が下がらず、啓太に病院に連れていってもらったら、インフルエンザだと診断されて、俺は一週間も外に出ることができなくなってしまった。
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