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―― 想う心と○○な味の……(21)
結局、あれから透さんからの連絡はなくて……。 バイトも強制的に休みだったし。
「あー、退屈だなぁ……」
啓太が持ってきてくれた漫画も全部読み終わったし……。
「贅沢言うな。 明日からバイトも復活なんだろ? 今日はおとなしくしてろ」
あれから啓太は、病人だから仕方がないとか言って、暇を見ては食事の用意をしてくれたり、差し入れを持ってきてくれたりしてくれている。
「だいたいなぁー、ゆり先輩とのラブラブデートで忙しい俺様が、直のご飯作ってやってるんだからな、ありがたく思えよ」
ゆり先輩とうまくいってるんだ、啓太。
「うん。 ありがとな、ホントに」
本当に、啓太が居なかったら俺、何も食べずに干からびていたかもなー。
「直に、そんなに素直にされると、なんだかこそばゆいけど。 だけどなー、お前もちょっとは料理とかやれよ」
「うん、やってみる。だから教えてね、啓太」
上目遣いで猫なで声を出してやると、啓太は「キモっ」とか言って、シッシッと追い払うジェスチャーをしてる。 ちょっとムカつくけど、世話になってるし、許してやるか。
「あ、そういやさ、もうすぐバレンタインだよなー」
『そういやさ』って、まるで、今思い出したように言ってるけど、啓太の頭の中が来週のバレンタインの事でいっぱいなのは、俺には分かってるぞ。
「今年は、ゆり先輩からの本命チョコが貰えるな、啓太」
「ぐふふふふ~」
鼻の下のばして、緩みきった顔してさ、まったく。
「直は、今年もいっぱい貰うんだろーなー」
チョコかぁ……。 毎年当たり前のように貰っていたけど……。
「俺、今年は貰わないよ」
「ええ? なんで?」
「だって、女の子の気持ちも何も考えないで、貰うだけ貰うのって、やっぱり駄目でしょ」
そう言うのは、やっぱり本当に好きな人のだけでいいよなって、去年なら考えもしなかった事を思ったりする。
「ああ、じゃあさ、透さんにあげれば? チョコレート」
なんか今、啓太がとんでもない事を俺に提案したような気が……。
―― 透さんに…?チョコだと?!
「ばっ、ばかっ! 男が男にチョコレート渡すなんて、そんな恥ずかしい事できるわけ……、」
「えー? だって、バレンタインって、好きな人に愛の告白する日なんじゃねーの?」
確かに、そうなんだけど……。
「いいじゃん、この際男同士でも。 直の本気を見せてやれ!」
「えーーー、うーーーーん。」
透さんにチョコレートかぁ……。
啓太には、「そんな事出来ない」とか言いながらも、心の中ではバレンタインデーに告白なんてのもいいかも…… なんて、ちょっとだけ思ったりもしていた。
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