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 —— 想う心と○○な味の……(33)

「手、放して……」 「駄目だよ、後で買ってあげると言ってるだろう? ほら乗って」  男は、黒い高級外車の後部座席のドアを開ける。 「嫌だっ、放せっ! はなせってば!」  男の手を振り解こうと、思いっきり腕を振ってみたり、引き抜こうと抵抗する俺に、「しつこいね、キミも」と、男は不機嫌そうにそう言うと、諦め切れずにもがく俺を力ずくで後部座席に押し込んだ。 そのまま男も、俺の隣に乗り込んでくる。 「濡れたコートは、脱ぎなさい」  そう言って、反対側のドアを開けて逃げようと暴れる俺の背後から乱暴にコートを剥ぎ取ると、高そうな黒皮のシートに、俯せに押し倒されて背中に体重をかけられる。  背後でネクタイをシュッと引き抜く音が聞こえたかと思えば、素早く俺の両手首を、それで後ろ手に縛り上げた。 「…… やめっ、何っ……?!」 「キミが大人しく、言う事を訊かないからだよ」  そう言いながら、グッと、背中を押さえつける重みが増して、俺の耳の中へ舌をねじ込んでくる。 「…… っ、や、だ!」  —— 気持ち悪いッ。 それしか感じない。 なんでこんな事されないといけないんだ。  耳の中で、男の舌が蠢めいて、じゅくじゅくと音を立てていて、ぞわぞわと粟立つ肌は決して快感からではない。 「いつもキミの事を見ていたんだよ」  服を捲り上げられて、男の手が背後から服の下へ滑り込み、直接肌を撫でまわす。 「…… あっ、やめ…… ッ」  胸の突起を見つけて、執拗に指の腹でぐりぐりと押しつぶすように転がされると、否応なく反応して身体がビクビクと震えてしまう。 「…… ッつ!」 「へえ……、思った通りだ。 キミ、男を知っているね…… 相手はやっぱりマスターか?」  気持ち悪いのに、嫌なのに……。 「店ではいつも、マスターがべったり張り付いてて、近寄れなかったからね。 今日はキミを見つける事ができてラッキーだった」  俺の身体を反転させて仰向けにすると、両手で服をたくし上げながら、腹に舌を這わせた。 「…… んっ…… っ」  感じてなんていないつもりでも、声が漏れてしまいそうで唇を噛み締めた。 それぐらいの抵抗しか出来なくて、硬く閉じた目尻から涙が零れた。  男のざらついた舌が、わき腹や鳩尾を這い回り、だんだんと上へ上がってきて、胸の突起にむしゃぶりついてくる。  乳首を強く吸い上げられて、快感とは程遠い痛みが走った。 「ッ、痛っ! もっ、やめろっ!」 「痛い? ここ、こんなにさせておいて、よく言うね。 それとも酷くされるのが好きなのか?」  硬くなりジーンズの前を押し上げている俺の股間に、男は膝をグイグイと押し付けながら嘲笑った。 「—— つぅ…… ッ !」  身体を捩って逃れようとしても、がっしりした身体に押さえ込まれ、手首を戒められた状態では、どうにもならなかった。  窓にはフィルムがびっちり貼られていて、外からは多分見えない。  助けを呼ぶにも、人通りの少ないこの路地では、絶望的かもしれない。  数十メートル先は、明るい大通りだと言うのに、こんな所で大胆に襲われるなんて思ってもみなかった。

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