136 / 351

 —— 想う心と○○な味の……(34)

 バタバタと脚をバタつかせて抵抗すれば、太股の辺りを挟むように跨がれて、動きを封じられた。 腰を浮かせてはね退けようともがけば、鍛え上げられた体の下に閉じ込められて、身じろぐ事も許されない。 「や…… っ!」  男が舌先をまた耳の中へ挿し入れて、ねっとりと舐められて濡れた感触に悪寒が走る。  同時に男のスラックスの下で硬く主張しているものを、俺の股間に擦り付けて腰を揺らせてくる。  男の息遣いが荒くなってきて、耳元ではあはあと吹きかけてくる湿った息が気持ち悪い。 「それで嫌がってるつもり? 気持ちいいんだろう? キミのも俺と同じくらい硬くなってるじゃないか」  ニヤリと厭らしく笑い、男は手を下へと伸ばして、俺のジーンズを押し上げている部分を大きな手で掴んだ。 「気持ちよくなんかっ! っやめ……」  その時、脱がされたハーフコートのポケットの中で、携帯のバイブが鳴った。  多分みっきーからの電話だと思った。 きっともう、近くまで来ているのかもしれない。  なんとか通話できる状態にしたい。 「け、携帯鳴ってるっ! 急ぎかもしれないからっ! 放して!」  半ば叫ぶようにそう言って、上体を起こそうと男の体の下でいっそう激しくもがいた。 「うるさいな、どうせ助けを呼ぶつもりだろう? そんな事はさせない。 折角のチャンスなのに」  そう言うと、再び覆いかぶさってきて、唇を塞がれた。 「んーーーっ !!」  男の舌が強引に唇を割り入り、奥へと逃げを打つ俺の舌に絡まってくる。  ジュルっと音を立てて舌を吸い上げられて、咥内へ流れ込む男の唾液に吐き気がした。  —— 気持ち悪い!  ざらついた舌と生ぬるい感触に、身の毛がよだつ。 俺は、最後の手段とばかりに、思いっ切り、男の舌を噛んでやった。 「…… っ!」  咥内に鉄の味が広がり、男が唇を放したと同時に、平手で頬を打たれた。 「やってくれるね……、優しくしてあげようと思っていたのに……」  そう言うと、男は俺のベルトを外しにかかる。 「いや、だ!! やめろっ! やめろーー!」  俺は渾身の力を振り絞り、シートの上で身体を跳ねさせた。  —— だれか! 誰か!  その時、外から突然車の窓を叩く音がした。 「警察でーす。 ドア開けてもらえますかー」  聞こえてきた声に、俺も男も驚いて動きが止まる。  でも、警察だと名乗っているけど、どう考えてもみっきーの声だ。 俺はこんな状況なのに、思わず喉の奥で、くっくっと笑ってしまう。  なのに男は、気付いていないようで、慌てた様子で俺から体を離すと、「ちっ……、」と舌打ちをする。 「早くドアを開けてくださーい。 車がギシギシ揺れていて、誰が見ても怪しいですよー」  更に、どう考えても、警察とは思えない言葉と同時に、割れるんじゃないかと思うくらいに窓ガラスを叩いている。  俺は、笑いを抑えるのに必死なのに、男は仕方ないと言った顔でドアを開いた。  外からみっきーが、開きかけたドアを大きく開く。 「はいー、その子、未成年だからねー。 アナタを逮捕しますよ、真澄さん」  みっきーの言葉に、男はギョッとした顔をしている。 「マスター、何でここが分かったんだ」 「これ、直のでしょ? あそこの角に落ちてた」  そう言って差し出されたみっきーの手にあるのは、さっき落としてしまったチョコクッキーシューの紙袋だった。 「…… みっき……」

ともだちにシェアしよう!