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—— 想う心と○○な味の……(37)
「そっか……、で? 透さん……、結婚するってどう言う事?」
そう言われて、現実を思い出したら、また涙で視界がぼやけてしまう。
握り締めた拳で、勝手に出てくる涙を、何度もゴシゴシと擦りながら、俺はみっきーに全部話した。
あの日から透さんには一度も会えなかった事。
透さんの妹が、バイト先のフロアマネージャーに、透さんが結婚して関西に行くと話していた事。
マンションに行ったら、もう引越しをした後で、隣の部屋の人が『転勤』したと言っていた事。
最後の方は、しゃくりあげてしまって、上手く喋れなかったけど。
「結婚に…… 転勤か……」
話を訊き終えたみっきーは、暫く考え込んだ後、「俺も……、ちょっと責任感じちゃうな」と言う。
「…… え? なんで?」
「俺がちょっかい出さなければ、上手くいってたかもだし……」
「みっきーの所為じゃないよ」
それに、みっきーとの事が無ければ、みっきーがいなければ、俺は、透さんへの本当の気持ちにまだ気付いていなかったかもしれない。
「んーーー、でも、やっぱ俺のせいもあるかもな」
「なんで?」
それでも申し訳なさそうに言うみっきーを、不思議に思う。
「直には、黙ってたんだけど……」
「うん……?」
「透とは、あの時会ったのが初めてじゃないんだ」
—— へー、そうなんだ…… ?
って、ええええ?
「え? どういう? …… どこで?!」
前から知ってたって事なのか、え? 俺といる時に何処かで会った? いやいやいや、そんな筈はないし。
寝耳に水で、泣いてた事も忘れて、俺の頭ん中はプチパニック状態だ。
「透は、俺と同じ高校の2年後輩だよ」
「後輩っ?」
「直のマンションの前で、車の中から見かけた時は、似てるなーと思ったんだけど、あの後マンションから出てきた時にはっきり顔を見て、後輩の透だと確信した」
—— 透……。
みっきーが時々、透と呼び捨てにしていたのを思い出した。 …… 知り合いだったんだ。
「え、ちょっと待って……、じゃあ透さんも、みっきーの事気付いていたのかな」
「……ん? ……、ああ、多分……」
みっきーの返事に、少し間があったのが気になったけど、それよりも、二人が知り合いだって事実が、みっきーに言われても驚き過ぎて信じられなかった。
「だから……、直? 聞いてるか?」
「…… う、ん。 ちょっとびっくり……」
別に知り合いだったからって、みっきーの所為じゃない思う。
でも、もしも透さんも、みっきーに気付いていたとしたら、驚いただろうな……。
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