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 —— 想う心と○○な味の……(38)

「だから、力になれる事もあるかもしれないよ。 透の友達に結婚の事とかの情報を聞けるかもしれないし、実家にだって電話して……、」  …… あぁ……、そうだ。 小さくてもまだ可能性は残されている。 みっきーの言う通り、その気になれば、もう一度だけでも透さんに会えることも出来るかもしれない。  だけどもう……。 「みっきー、ありがとう。 でもいいよ、もう」 「え? なんで?」 「結婚するんなら、もういいんだ。 透さんが結婚するって決めたんなら、それを邪魔する事なんて出来ないし」 「本当に結婚するのかどうかも、分かんないのに?」  透さんから連絡が無いのが、一番の答えじゃないかと思う。  何も言わずに行ってしまったのは、そういう事なんだ。   それは、どんなに良い方向に考えても、変える事の出来ない事実だから。  だから……、これ以上は、もう……。 「なんかの映画みたいにさ、結婚式場から攫うとか…… さ?」  冗談とも、本気ともつかないみっきーの言葉に、ちょっとだけ笑えた。 みっきーの事だから、本気も入ってるだろうけど。 「透の事、忘れられるの?」  忘れたくないけど……。  今はまだ、忘れられないけど…。 「……忘れなきゃな……」  そう呟いた俺に、みっきーは頷きもせず、否定もせず、ただ黙って微笑んでいた。  いつかきっと、時が忘れさせてくれるでしょ?  そういうもんでしょ?  また新しい出逢いがあって、その人とまた恋をして。  そうしたらきっと、その人に夢中になって、その頃には、今の苦しい想いも痛みさえも忘れてる。  ああ、そんな事もあったなー、なんて思うに決まってる。  いつだって、『今』の想いが一番なんだから。  ***  その日は、みっきーのマンションに泊まるかと言ってくれたけれど、少し独りになりたかったのもあって、俺のワンルームに送ってもらった。 「みっきー、いつメキシコに行くの?」  車を降りる時に、そう言えばと思い出して、運転席のみっきーを振り返る。  メキシコに行くまでに、みっきーに俺のクッキーシュー作ってあげないとね。 「んー、4月からかな。 何? やっぱり一緒に行く?」  にんまりと、笑いながら、みっきーらしい応えが返ってきて、「行かないよ」って、俺は笑って応える。  じゃあまたね。 と、言って、動き出したみっきーの車を、見えなくなるまで見送って、俺は独りの部屋へ、帰った。

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