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—— 想う心と○○な味の……(39)
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3月に入って、寒さも段々と和らいできて、季節は移り変わる。
長すぎる春休みは、殆どバイトに明け暮れていた。
働いている時は、余計な事を考えなくて済む。
ただ…… 最近俺は、透さんを無理に忘れようとするのを止めていた。
透さんと会っていたあの頃から、時間はどんどん遠ざかるのに、記憶だけは鮮明で色褪せる事もなく。
忘れなきゃと思うけど……、そう思うだけで胸が苦しくなるから。
透さんが、居なくなってしまったと知ったバレンタインデーのあの夜、みっきーと別れて自分の部屋に戻ってシャワーを浴び、すぐにベッドに入った。
何も考えずに、ただ眠りたかった。 でも、身体は疲れているのに、目を閉じていても、なかなか寝付けなくて。
何度も寝返りを繰り返し、考えるのを止めた筈なのに、浮かぶのは透さんの事ばかり。
もう会えないと思うと、苦しくて、痛くて、辛い。
まだ外は暗いのに、新聞配達のバイクの音が聞こえた頃、喉が渇いて一度起き上がり、冷蔵庫を開けてペットボトルの水を飲んだ。
そのまま小さな冷蔵庫を背もたれにして、床に座り込んでしまうと、動くのも面倒で。
もう会えないと思うと辛い、忘れなきゃと思うのも辛い。
じゃあ透さんに迷惑はかけないから、勝手にまだ好きでいてもいいかな。
そう考えると、少しだけ気持ちが楽になった気がした。
膝を抱えて目を閉じると、漸く眠気を感じて、少しの間、冷蔵庫に凭れたまま微睡んでいたと思う。
東の空が少し明るくなった頃、啓太が部屋に尋ねてきた。 ドロドロに酔っ払って。
どうしたのかと話を訊けば、
14日のバレンタインは、ゆり先輩にチョコレートを貰ったらしい。
良かったじゃないかと言えば、貰ったのは自分だけじゃなくて、その時同じ場所にいた他の男5人くらいと、同じチョコレートを貰ったそうだ。
…… つまり…… ?
それで泥酔したのかと思ったら、
その時、ゆり先輩は今夜誰と夜を過ごすかって話になって、みんなでクジを引いたらしい。
…… なんだそれ…… ?
とにかく、啓太はクジには外れて、他の残った男共と、明け方まで仲良く呑んでいたらしい。
それで啓太は、ゆり先輩を諦めるのかと思ったら、今も果敢にアタックをかけている。
ゆり先輩が、啓太含めて6人に渡したチョコレートって、義理チョコなのかと俺は思っていたんだけど……、実は全部本命のつもりだったそうだ。
それでいいのか、啓太…… って、思うけど、それでも好きだから…… って、啓太は言った。
—— 好きっていう自分の気持ちは、誤魔化せない。
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