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 ―― 想う心と○○な味の……(56)

「ッ、透さんっ、」  真っ赤になって抗議すれば、クスクスと愉しそうに笑いながら、宥めるように頭を撫でられた。  今のキスで、また身体の奥に火が点いちゃったんだけど! 「透さん、俺、キスしたい……」  上目遣いで、可愛くお強請りしてみたんだけど……。  だけど透さんは、「駄目だよ」って、言って、キスの代わりにまたクッキーシューを俺の顔の前に差し出して……。 「ほら、全部食べなきゃ」  って、首を傾げて、甘い声で言われたら、なんかもう逆らえなくなっちゃって。  また二人でクッキーシューにかぶりつく。 「―― むぅ…… ん」  そしてまたクリームがはみ出して、舐められて、キスをして……って、何度も繰り返して。  最後のひとくちを食べ終わったら、またキスをして。 その頃には俺はもう、とろとろに蕩けさせられていた。 「直くん、誕生日おめでとう」  って、鼻先がくっつくくらいの距離で、あの甘い声で囁いてくれる。 「…… ありがとう、透さん」  そして今度は、深く唇を重ねて、そのままベッドに縺れ合いながら倒れ込む。  夕飯食べてない事なんて、すっかり忘れて、朝方まで何度もお互いの熱を感じ合う。  二人でくたくたになるまで、幸せに酔い痴れて、疲れきって眠る。 隣に透さんの体温を感じながら……。  本当に好きと思える人と、出逢える奇跡。  それだけで幸せだと思ったけど、  ―― でも、本当は……。  こうして、隣に愛しい人の体温を感じて眠ることができること。  二人で笑ったり、泣いたり、怒ったりしながら、毎年お互いの誕生日を祝ったり……、  ずっと一緒に過ごせることが、もっと、もっと、幸せだなって思う。  あの公園で、また出逢えて、よかった。  透さんに、想いを伝える事ができて、よかった。  透さんの想いを、伝えてもらえて、よかった。  朝、目が覚めたら、もう一度言うんだ。  あなたを想う気持ちは、この先も変わらないことを。 「透さんを、愛してる」―― って。

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