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—— 出逢えた幸せ(2)
そんな事を考えながら、二人を見ていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。
「―― 兄貴ーっ!」
声のする方へ振り向けば、桜川先輩が、大きなトランクを引き摺りながらこちらへ歩いてくるのが見えた。
「…… どしたの?お前……」
みっきーは、切れ長の目を丸くして、驚いている。
「おっ、俺も行くから! メキシコ!」
「はぁ?!」
桜川先輩の言葉に、ここにいる誰もが驚いていた。
「なんでお前も行くわけ?」
みっきーの質問にも答えずに、「チェックインしてくるから、待ってて」と言って、チェックインカウンターへ向かう桜川先輩。
「理由を言え、理由を!」
腕を掴んで引き止めるみっきーを、桜川先輩は振り返ってまっすぐな瞳で見つめた。
「兄貴と離れたくないからだよ!」
「…… へ?」
驚きで呆然としてるみっきーの手を振り解いて、桜川先輩はトランクを引き摺って、さっさとチェックインを済ませてしまう。
「あ、あのなぁ、離れたくないって、2週間だけだぞ?」
戻ってきた桜川先輩に開口一番みっきーが言った言葉に、今度は桜川先輩も俺も透さんも驚いた。
「え? みっきー、ずっとメキシコに住むとか言ってなかった? 向こうで仕事するって……」
俺がそう言うと、みっきーはバツの悪そうな顔をする。
「みっきー?」
「兄貴?どう言う事だよ?!」
「ああー、だからな、その…、ずっと行くわけでなくて、向こうで店をオープンする友達に会いに行くだけ…… って言うか……」
みっきーは困り果てたように頭を掻いているけど、急に「…… あーもう! 悪かったよ!」と、開き直ったような態度で言葉を続けた。
「向こうで仕事するってのは嘘だよ! そう言ったら、もしかして、直が俺について来てくれるかなーなぁんて思って言ってみただけで……」
「はあ?」
みっきーの言葉に、桜川先輩の視線が俺を突き刺してんだけど!
「ああー、だから旅行、旅行! 勇樹チェックインしたんだろ? もうほら、そろそろ時間だし、行くか! メキシコ! な?」
そう言って、まだ怒ってる桜川先輩の腕を掴んで引き摺るように歩いていく。
「直、透、また帰ってきたら、会おうねー」
なんて、呑気なこと言って、桜川先輩を引っぱりながら手を振るみっきーを 透さんと二人で呆れながら見送った。
「桜川先輩って、みっきーの事……、」と俺が言いかけると、「そうかもね……」と、透さんも相槌を打って、二人で顔を見合わせて、ぷっと吹き出すように笑った。
みっきーが、あんな嘘をついたのは、多分……。 俺に本当の気持ちを気付かせる為…… かな。
その嘘のおかげで、透さんへの気持ちに気付く事が出来た。
いつもみっきーは、何気に俺の背中を押してくれていた。
…… ありがとう……。
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