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―― 君の初めては全部……(4)
シュッと微かに衣擦れのような音をさせて、目を覆った布のような物を、透さんは俺の後頭部でキュッと縛り付けた。
「え? …… 透さん? 何……?」
なんだ? なんで? って、頭ん中、クエッションマークだらけなんだけど、透さんに目隠しをされてしまったんだってことだけは分かる。
だけどなんで?
思わず、目を覆っている部分を布の上から指で触れてみると、頭の上から「ふっ……」と、小さく笑う声が落ちてきた。
「外しちゃ駄目だよ。 俺がいいって言うまで」
少しトーンを落とした声と共に、不意に目を覆っている布を触っていた両手を掴まれて、ビクンと体が震えた。
「…… 透さん?」
指先で触れてみた感触で、目を覆っている布がさっきまで透さんが締めていたネクタイだっていう事くらいは分かる。
外から帰ってきてすぐに寝室に直行して、二人して脱がせ合いしながら、俺が解いて床に放り投げたネクタイだ。
—— だけど、なんで?!
「こうやって、目隠ししてセックスした事はある?」
掴まれた両手をクイッと引き寄せられて、チュッと音を立てながら、柔らくて濡れた温度が指先に触れて、また体がビクッと跳ねた。
「目隠しして……、なんて、したことないよ」
なるべく平静を装って、そう答えたけど、本当は、すげえドキドキしてて、キスされた指先に神経が集中してジンジンする。
「そう? それは良かった」
ちょっと嬉しそうな声。
「…… 透さんは……? したことあるの?」
「俺もないよ」
笑いを含んだような声でそう言って、透さんは掴んでいた俺の手をそっとシーツの上へ下ろして放してしまう。
息遣いや、シーツに肌が擦れる音や、微かに揺れるスプリングに、すぐ近くに透さんがいると分かるけど、何も見えないのにじっと見られている気がして、なんだか恥ずかしくて、思わず目を覆っているネクタイに手をかけようとした。
「駄目だよ、取っちゃ」
すかさず透さんの声が飛んできて、もう少しでネクタイに触れそうだった手が反射的に空中で止まる。
すると、急にベッドのスプリングが大きく揺れて、透さんの気配が遠退いていってしまう。
目隠しされていても、近くに気配があれば、肌の温度も感じることができるけど、それが全く失くなってしまえば、急に不安がこみ上げてくる。
「と、透さん?」
「すぐ戻ってくるから、そのままちょっと待ってて」
「は、はい……」
待てって言われて、思わず素直に返事しちゃったけど、え? なにこれ? このまま、まさかの放置プレイ?
ベッドの上で正座して、おとなしく待ってる俺って、まるで従順な犬みたいじゃない? って思うと、自分でもちょっと笑える。
床の軋む音が遠退いて、内心はすごい焦ってる。 まさかこのまま部屋を出て行ったりしないよね? って。
だけど、ドアの開ける音が聞こえてきたけど、目が見えない分、聴覚が鋭くなっているのか、気配だけで音を聞き分けて、これは部屋のドアじゃなく、クローゼットに入るドアの音だって分かった。
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