233 / 351

 —— Moonlight scandal(57)

「ちょっ、直くん?!」  ちょっと驚いた顔をしている透さんに、深く、深く、口付けて、唇を少しだけ離して、黒い瞳を覗きこむ。 「オレが、もっと、今よりもっと大人になったらーー、」  透さんの耳朶を甘く食みながら、囁くように伝えた。 「もっとたくさんの幸せをあげるから、そしたらさ……」  耳殻に舌を這わせば、透さんの身体がピクンと微かに震えた。 「その時は、オレがとーるさんを、抱いてあげるねー」  もう自分で何言ってるのか分かんなくなってきたけど……、透さんの甘くて優しい眼差しに見つめられたら、俺、なんだか体が熱くなってきて、もう蕩けてしまいそうで。  堪らなくなって、透さんに覆い被さって、またキスをする。  柔らかい唇を割って舌を挿し入れれば、透さんの舌が絡んできて、やわやわと吸い上げてくる。  咥内も熱くなってきて、飲み込み切れない唾液が、口端から零れていく。 「ん、っ、」  段々、気持ちよくなってきて……、  気が付いたら、俺は透さんに、ソファーの上で組み敷かれていた。  —— あれ? いつの間に? さっきまで、俺が上だった気がするんだけど……。  って、ぼんやり考えてたら、透さんが覗き込むように、俺に視線を合わせてきた。 「前から思ってたんだけど……」  情欲に濡れた瞳で上から俺を見下ろして、少し低い声で言葉を落とす。 「なーに?」 「直くんて、もしかして、お酒弱いんじゃない?」 「—— そんなことないよ! ビールだって毎日のんでるしー」 「ふーん、毎日飲んでるんだ……」 「…… あ…… ?」  透さんと、二十歳になるまでは、一人の時に呑んじゃ駄目って、約束してたんだけど、そんな事うっかり忘れてしまっていた。 「じゃあ、お仕置きだね」  そう言いながら、透さんが俺のシャツの裾を捲り上げて、肌の上を直接撫でてくる。 「…… ふぁ…… おしおきー?」 「そうだよ」と言いながら、首筋を舌でねっとりと舐められて、肌が粟立っていく。 「オレもー、いつか透さんに、おしおき、してあげるね」 「はいはい、大人になったらね」  —— 楽しみにしているね……。  そう聞こえた気がする。  憶えているのは、そこまでだった……。  …… 気が付けば、朝になっていたから。  身体には、甘い余韻と、…… 二日酔い。  —— あー、頭痛ぇ……。  上半身を起こそうとして、キーンと絞められるような頭の痛さに眉を寄せてしまう。  俺は起きるのを諦めて、隣で寝息を立てている透さんに、そっと、起こさないように、身体をすり寄せる。 「…… ん……」  小さな吐息のような声とともに、透さんの身体が微かに身じろいだ。  肩に埋めていた顔を上げて、顔を覗きこむと、透さんはまた規則的な寝息を立て始める。  俺は 少し伸び上がって、その唇に、そっとキスをして もう一度透さんの肩口に鼻先を埋めた。  —— 今日はゆっくり、休ませてあげよう。  いつも忙しい透さんが、しっかり休養できるように。  目が覚めたら…、一緒に遅い朝食を食べて……。  そんな小さな幸せを、今日も育てていく。  月の灯りの下で、ドキドキするような想い出も、忘れられないけど……。  今日のように、穏やかに過ごす日常も、忘れられない想い出になる。  逢うたびに好きになる愛しい人と、これからも、小さな幸せを増やしていきたい。  …… ずっと一緒に……。  —— 朝食に何を食べさせてあげようかな。  冷蔵庫の中を思い出しながら、俺は目を閉じた。  —— まぁいいや、起きてから…、透さんと一緒に考えよう。 Extra: Moonlight scandal end...… / + to be continued → →

ともだちにシェアしよう!