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—— Moonlight scandal(57)
「ちょっ、直くん?!」
ちょっと驚いた顔をしている透さんに、深く、深く、口付けて、唇を少しだけ離して、黒い瞳を覗きこむ。
「オレが、もっと、今よりもっと大人になったらーー、」
透さんの耳朶を甘く食みながら、囁くように伝えた。
「もっとたくさんの幸せをあげるから、そしたらさ……」
耳殻に舌を這わせば、透さんの身体がピクンと微かに震えた。
「その時は、オレがとーるさんを、抱いてあげるねー」
もう自分で何言ってるのか分かんなくなってきたけど……、透さんの甘くて優しい眼差しに見つめられたら、俺、なんだか体が熱くなってきて、もう蕩けてしまいそうで。
堪らなくなって、透さんに覆い被さって、またキスをする。
柔らかい唇を割って舌を挿し入れれば、透さんの舌が絡んできて、やわやわと吸い上げてくる。
咥内も熱くなってきて、飲み込み切れない唾液が、口端から零れていく。
「ん、っ、」
段々、気持ちよくなってきて……、
気が付いたら、俺は透さんに、ソファーの上で組み敷かれていた。
—— あれ? いつの間に? さっきまで、俺が上だった気がするんだけど……。
って、ぼんやり考えてたら、透さんが覗き込むように、俺に視線を合わせてきた。
「前から思ってたんだけど……」
情欲に濡れた瞳で上から俺を見下ろして、少し低い声で言葉を落とす。
「なーに?」
「直くんて、もしかして、お酒弱いんじゃない?」
「—— そんなことないよ! ビールだって毎日のんでるしー」
「ふーん、毎日飲んでるんだ……」
「…… あ…… ?」
透さんと、二十歳になるまでは、一人の時に呑んじゃ駄目って、約束してたんだけど、そんな事うっかり忘れてしまっていた。
「じゃあ、お仕置きだね」
そう言いながら、透さんが俺のシャツの裾を捲り上げて、肌の上を直接撫でてくる。
「…… ふぁ…… おしおきー?」
「そうだよ」と言いながら、首筋を舌でねっとりと舐められて、肌が粟立っていく。
「オレもー、いつか透さんに、おしおき、してあげるね」
「はいはい、大人になったらね」
—— 楽しみにしているね……。
そう聞こえた気がする。
憶えているのは、そこまでだった……。
…… 気が付けば、朝になっていたから。
身体には、甘い余韻と、…… 二日酔い。
—— あー、頭痛ぇ……。
上半身を起こそうとして、キーンと絞められるような頭の痛さに眉を寄せてしまう。
俺は起きるのを諦めて、隣で寝息を立てている透さんに、そっと、起こさないように、身体をすり寄せる。
「…… ん……」
小さな吐息のような声とともに、透さんの身体が微かに身じろいだ。
肩に埋めていた顔を上げて、顔を覗きこむと、透さんはまた規則的な寝息を立て始める。
俺は 少し伸び上がって、その唇に、そっとキスをして もう一度透さんの肩口に鼻先を埋めた。
—— 今日はゆっくり、休ませてあげよう。
いつも忙しい透さんが、しっかり休養できるように。
目が覚めたら…、一緒に遅い朝食を食べて……。
そんな小さな幸せを、今日も育てていく。
月の灯りの下で、ドキドキするような想い出も、忘れられないけど……。
今日のように、穏やかに過ごす日常も、忘れられない想い出になる。
逢うたびに好きになる愛しい人と、これからも、小さな幸せを増やしていきたい。
…… ずっと一緒に……。
—— 朝食に何を食べさせてあげようかな。
冷蔵庫の中を思い出しながら、俺は目を閉じた。
—— まぁいいや、起きてから…、透さんと一緒に考えよう。
Extra:
Moonlight scandal end...… / + to be continued → →
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