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―― 幸せのいろどり(prologue)
その夜……。
あの公園で偶然彼に出逢ったのは、運命だったんだろうか。
もう逢うことはないと思っていた彼と。
世間はクリスマスイブで、
街は、煌くイルミネーションで飾られて、あちこちにクリスマスソングが流れている。
休日だと言うのに、遅い時間まで会社で残っていた仕事を片付けていた俺は、帰宅途中に車の中から見える、楽しそうに恋人や友達と笑いながら、行き交う人波から逃げるように、人気のない公園の前に車を停めた。
なんとなく、夜空を見たい…… なんて思ったのも偶然だったんだろうか。
俺は車を降りて公園の中へ入っていった。
*******
まさか彼に逢うなんて、思っていなかった。
あの店で顔を合わせていても、ただの店員と客。
そこで逢ったからと言って、話しかけなくてもいい関係だった。
なのに……。
目が合ったまま、視線を逸らす事は出来なかった。
彼も、立ち止まり、此方を見ていて……。
気が付けば、俺は彼の方へと歩き出していた。
まるで、引き寄せられるように、自然に。
―― でも、それがまさか、こんな事になるなんて思っていなかった。
自分でも抑えきれない衝動に駆られて。
一度触れてしまえば、もう止めることが出来ない欲望。
彼の額にかかる、細くて柔らかい髪を、梳くように掻きあげてやると、スルスルとした感触で指の間を滑り流れていく。
長い睫を震わせて、桜色の唇から堪えきれない甘い声を漏らして。
「…… っ、ぁ…… ッ」
俺の指に、掌に、触れると吸い付くような滑らかな肌へ、口付けを落としていけば、敏感に反応して、熱を持ち、紅く染まっていく。
「ぁ…… ああああっ!」
―― 誘ったのは、俺。
俺と出逢わなければ、経験する事もなかった筈なのに…。
―― 煽ったのは、彼。
初めての行為に戸惑いながらも、確かに彼は快楽に身を委ね、もっとと、それ以上に求めて、俺に指を伸ばしてくる。
昨日まで、ただの店員と客。
顔を知っているだけで、会話もしたことのない相手。
しかも、その相手、直くんは、10歳も年下の、まだ十代の男なのに。
つい、触れてしまったとしても……、そこで止めるべきだった。
『冗談だよ』って、笑えばそこで終われたのに。
―― 俺は止めなかった。
触れれば、触れるほど、もっと直くんの事を知りたくなって。
もっと深く、直くんの最奥へ、俺の欲望を突き入れた。
あの時……、もうこれで逢う事もなくなるだろうと、思っていた筈なのに。
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