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 —— 幸せのいろどり(1)

 いつも、妹と待ち合わせしていたカフェレストランで、彼はホールスタッフのバイトをしていた。  *****  待ち合わせの時間までは、まだかなり余裕がある。  ……いつもの事だけど。  約束の時間より早めに来て、相手を待つのは、待ち合わせの楽しみのひとつ。  でも、毎週金曜日、妹との待ち合わせのこの時間は、約束している妹と会うことよりも……。  カフェの入り口近くの窓の前で足を止め、何気ない素振りで窓から店内を覗く。  —— いつからだろう……。  こうして、『彼』の姿を目で追うようになったのは。  店内を忙しく動き回る、ホールスタッフの彼。  時々、柱の影に隠れてボーっとしているところを見つかってフロアマネージャーに怒られていたり。  ユニフォームのギャルソン服が、細すぎないスレンダーな身体によく似合っていて。  明るいブラウンの柔らかそうな髪、吸い込まれそうな大きな瞳に、長い睫。  女の子のように可愛い顔立ちで、客に向ける笑顔は、周りをパッと明るくするような威力があって、大勢の中にいても、目立つ存在だった。  —— だから……、  自然に、気が付くと彼の姿を追っている。 彼の姿を見ているのは、とても楽しいから。  ただ、それだけのこと……、の筈だった。 「—— お兄ちゃん!」  遠くから聞こえる妹の声に振り返ると、淡いピンクのコートを着た静香が、走ってくるのが見えた。  約束の時間には、まだ間があるから、そんなに慌てて走らなくていいのに。  息を切らせて駆けてくる妹の姿に、自然と笑みが零れる。  でも、こうして妹と待ち合わせをするのも、今日で最後になる。  子供の頃に、両親の離婚でお互い離れて暮らしていたけれど、母が亡くなって、静香が精神的に落ち込んでしまった頃から、毎週のように様子を見る為に会いに行っていたのが、いつの間にか当たり前のように会うようになっていた。

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