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 —— 幸せのいろどり(43)

   先端から溢れる先走りを指に絡め、全体に伸ばすようにゆるゆると扱いていく。 「―― は、ぁ……、やッ……、あ」  堪えきれないような声が、直くんの唇から落ちてくる度に煽られる。  もっと感じて欲しくて、先走りが止め処なく滲み出てくる先端に唇を寄せて、甘い蜜を味わうように舌でなめ取った。 「ちょッ、あッ……、あ」  そのまま先端から咥内へ咥え込み、軽く吸い上げながら上下させると、倒したシートに身を委ねていた直くんが、上体を起こして俺の肩を力の入らない手で押して抵抗する。 「と、ぉるさん、ダメッ…… やめっ、」 「直くんは、夜景を観ながら、ただ感じてて」  俺に、こんな事をされている事も、俺の咥内の温度も、全部、身体で憶えておいて欲しい。  直くんが、俺から離れてしまって、もう逢うことも無くなってしまっても、記憶の片隅に憶えておいて欲しい。 「ぁーーッ! だ、だめ…… ッ」  もう限界に近い、直くんの裏筋を舐めて、カリを刺激して、蜜口を舌先でなぞれば、直くんは背中を反らしながら快感の声をあげる。  俺の唾液と直くんの先走りの混ざり合う水音が、車の中に厭らしく響いていた。  喉に当たる程奥まで飲み込んで、苦しいけれど俺も直くんの全てを憶えておきたかった。  逢う度に、こうやって、お互いの温もりを教え合って、いつまでも忘れずにいたいなんて思っていた。 「は…… ァッ、あッ、もっ……、出るッ、離し…っ! イクッ…… ッ」  焦った声と共に、直くんが俺の頭に手を伸ばして、引き放そうとする。 その瞬間、ドクドクと波打ちながら、熱い飛沫が咥内に吐き出され広がっていく。  その熱さ、匂い、味も、全てを忘れないように、最後の一滴まで搾り取るように吸い上げて、全部喉へと飲み干していった。  ***  直くんの服と、髪の乱れを整えながら、名残惜しくて何度も軽く直くんの唇を啄ばむようにキスをした。 「そろそろ帰ろうか」と、俺が言うと、「え、もう?」なんて応えてくれる。  そんなひとことが、どれ程嬉しいか分かってて言ってるんだろうか。 「ん? 何? 口でするだけじゃ、物足りなかったかな?」  俺は、軽い冗談を言うことでしか、そんな気持ちを隠す術を知らなかった。

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