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―― 幸せのいろどり(105)
「…… 知ってた? どうして?」
「んー、なんとなく…… だけど……」
だってさ、と言いいながら、直くんは少し困ったように頭を掻く。
「あのみっきーが、透さんみたいな綺麗な人、ほっとくわけないよなーって。 なんか、そう考えたら、もしかしたらそういう事があってもおかしくないし、それに……」
そこまで言うと、直くんは俺から視線を逸らして、空を見上げながら言葉を続けた。
「初めて透さんのマンションに行った、去年のクリスマスイブのあの時、透さん、男同士なのに慣れてるなーって、俺以外に経験したことあったのかなって…… って、ちょっとだよ?ちょっとだけそんな事思ったりして……」
ちらっと、俺の方に視線を戻して、申し訳なさそうな顔をする。
「…… 後で考えたら、みっきーしか居ないような気がして」
「…… 怒ってないの? 俺が光樹先輩と、その…… そういう関係だった事とか…… その事を黙ってた事とか」
「え? なんで? 怒るわけないよ。 そんなの、昔のことだし。 そんな事言ったら俺だって、昔のことなんて言えない事いっぱい……」
そこまで言いかけて、直くんは慌てて自分の口を両手で塞いでる。 俺は笑いを堪えながら、口を塞いでいる直くんの手を掴んで引き寄せた。
「俺、結構ヤキモチ妬きなんだけど……」
決まり悪そうな表情を浮かべている直くんの耳元にそう囁いて、つい滑らせてしまったその可愛い唇を塞ぐ。
「…… ん……、ふ……」
何度も角度を変えて、段々と深く口付けていくと、直くんの甘い吐息が漏れ始める。 俺がそうなるように仕向けたんだけど。
「…… と、おるさん……」
名前を呼ばれて唇が触れ合う位置で、「何?」と、聞き返せば、「…… 透さんの、マンションで続きしたい……」と、上目遣いで誘ってくる。
その身体が、さっきから熱くなりかけている事は、気付いていた。
「…… マンションまで我慢できる?」
「出来るよ! …… と、思います……」
「…… 何それ……」
可笑しくて、二人して笑いが止まらなくなって、またキスをして。
直くんの明るさに、俺はいつも助けられている。 直くんの明るさに、いつも支えられてる。 ―― そんな気がする。
だから俺も、君の支えになりたい。 この先迷うことや辛いことがあっても、どんな時も、もう離れたりしないように。 もう絶対この手を離したりしない。
―― ありがとう、直くん。
そうだね……。 君の言うように、毎年この公園に一緒に来よう。
あの夜ここから始まった恋は、きっと一年、一年、少しずつ、新しい色を見つけていくから。
来年も、再来年も、ずっと君と一緒に此処からまた始めたいと、俺もそう思うよ。
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