―― 聖夜と生クリーム味の……(2)

「直くんて…、顔に似合わず凄いよね……」  息を整えながら先輩は、少し潤ませた目で俺を見上げる。 「それ、誉め言葉なの?」 と、苦笑して聞き返しても、先輩は質問には答えずに、俺の髪にそっと手を伸ばした。 「柔らかい髪ね。綺麗な栗色…… これ染めてるの?」  俺のゆるいくせ毛を遊ぶように指を絡ませて、上目遣いで小首を傾げて訊いてくる先輩は、本当可愛いなと思う。 「染めてないよ。これ、元々こういう色なんだ」  応えながら、俺は教室の時計に視線を向けた。 「ふぅん……」  先輩だって本当は、さして興味もなかったのだろう。適当に返事をすると、時計を気にする俺の頬を両手で包んで、自分の方へ向かせて甘えた声で囁いた。 「ね…… もっかいしよ?」 「だ~め」  まるで子供をあやす様に、俺は先輩の頭を軽く撫でてから立ち上がり、乱れた服を整える。 「どうして?」  少しだけ膨れっ面……。だけど、可愛く小首を傾げ、甘えた声は忘れずに、訴えるような瞳を向けてくる。  ―― 困ったな。誘われると弱いんだってば。  だけど、無理なものは無理なわけで……。 「今からバイトなんだ」 と、いかにも残念そうな顔で言ってみる。 「そっか~。残念。また今度遊んでね?」  そう応える先輩だって、そんなに残念そうには、とても見えない。  そう…… だってこれは遊びだから。 「うん、またね。」  と、テンプレ的に応える。 また今度…ってあるのかな…と内心思いながら。  ドアの前で一旦立ち止まり、顔だけ先輩の方を振り返り「じゃねー」と軽く手を振ると、先輩も同じように「ばいばい」と手を振っていた。  外に出ると、もう辺りは薄暗い。 昼間はまだそこそこ暖かいのに、太陽が沈むこの時間は気温も下がり、冷たい風が吹いている。 「寒っ……」  教室内と外の温度差が大きくて、冷たい風が首筋に当たり一瞬ぞくっと身震いしてしまう。  着ているダウンジャケットのファスナーを上まで上げて、ポケットから出した携帯で時間を確認する。 「やばっ、急がなくちゃ」  さっき先輩の誘いを断る為に言ったことは、嘘じゃなくて、本当に時間が無い。 バイトがなかったら、きっとあのまま先輩と続きをしてただろうな。  今日が金曜日じゃなかったらなぁ…… なんて考えながら、俺は急いでバイト先のカフェレストランに向かった。  *****************
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