6 / 351

 ―― 聖夜と生クリーム味の……(5)

 「ありがとうございました」  二人がこの店でお茶をするのは、いつだってほんの30分くらい。週に一度の、たったこれだけの時間なのに心に残って忘れられない。  店を出て駐車場まで歩いて行く二人を、俺は何気なく窓越しに見送った。  店の窓から漏れる白熱灯の灯りに照らされて、二人の影が近付いて、女性がさりげなくあの人の腕に腕を絡めて……。  恋人同士なら、当たり前だ。なのに、何故か胸の奥にツンと、小さな痛みのようなものを感じてしまう。  そして、二人は一旦立ち止まって、男性は少し屈んで女性の顔を覗き込んでいる。 「……?」  遠目だし、はっきり分からないけど、女性が泣いているみたい。あの人は、女性の頭に優しく手を置いて……、慰めているのかな。そして漸く顔を上げた女性と見つめ合っていた。  助手席側のドアを開けて女性を先に車に乗せてから、あの人も運転席に乗り込んでエンジン音が聞こえてきた。そんな動作もすごく自然で、絵になる二人だと思う。  車が駐車場を出て夜の街に消えていくのを眺めながら、俺は心の中で、憧れと……、なんとなく嫉妬のような気持ちが混ざり合っている事に、戸惑っていた。  *****  もうすぐクリスマス。  街は賑やかに、クリスマスの飾りが溢れ出し、12月の慌ただしさを感じられるようになった頃、あのカップルが、姿を見せなくなった。  いや、正確に言うと……、女性だけが来なくなったんだ。男性だけが一人で来店して、そしていつもコーヒーだけ飲んで帰っていく。 「どうしたのかなぁ」  そういえば……、最後に見た時、女性は泣いているようだった。やっぱりあれは、喧嘩でもしていたのかな。 でも、すぐに仲良さげに車に乗ったしなぁ。  少し……、いや、かなり気にはなるけれど……。 「いつものお連れ様、どうされたのですか?」  なんて、訊けるわけないし!  ―― まぁ俺は、彼に会えるだけで…… 「……」  ―― ちがーうっ!  そうじゃなくて!  断じて憧れだから……! ただ見てるだけで幸せっていうか……  いや!だから、そー言うんじゃなくてっ!  こないだから、この訳のわからない気持ちにかなり困惑してるんだけど。考えても分からないから、そんな気持ちは心の片隅に追いやろうとしていた。