―― 迷う心とタバコ味の……(19)

「おー啓太、来てたのー?明けましておめでとー!」 「うぁっ、あ、梓さん、おめでとうございますー」  姉ちゃんの登場で、後退りする啓太。 昨年の恐怖が蘇ってるのか? それだったら、今年もわざわざ罠に嵌りに来なくていいのに。  お雑煮の餅を食べながら横目で啓太を見ると、恐怖と言うよりも、頬を赤らめてなぜか嬉しそうな顔をしている。  ―― え? ホントにM体質なの? 啓太。 「啓太もいる事だし、恒例の大富豪、始めようかっ!」  姉ちゃん、やる気満々過ぎ! 大きな声にびっくりして、餅が喉に詰まりそうになったじゃねーか。 「ちょ、雑煮食べ終わるまで、待ってって……、あれ? 一哉さんは?」  そう言えば、起きてから姉ちゃんの旦那さんの一哉さんを見ていないんだけど……。 「あー、カズくんね。 なんか朝から友達と約束があるって言って出かけたのよ」 「ええええええええええええっ!?」  ―― 逃げたなっ、一哉さん……。  罰ゲームの対象になりそうな仲間が一人減った事に、箸を落としそうになった。  これで俺と啓太と親父の3人で、最下位争いをする事になったわけだ。  ***  ただ今、4回戦が終わって最終戦をやっている最中。  予想通りの席順で、進んでおります。  大富豪が姉ちゃん、富豪がテルさん、平民が親父、貧民が俺、ど貧民が啓太。  ど貧民にさえ、ならなければ良いんだ。このままの流れなら、今年も罰ゲームは啓太に決定の筈…… だった。 「今年は負けないぞ、直」 「え?」  俺を横目で睨みながら、挑戦的な台詞を吐く啓太に、俺は驚きを隠せないんだが……。 「お前、今年も姉ちゃんの下僕になりたいんじゃなかったの?」 「はぁ? んな訳ないだろ? 昨年のあの屈辱、今年はお前に味わわさせてやるのが、今日の一番の目的なんだからな」  何それ!? なんで俺に敵対心剥き出しなの? 「だって、さっき姉ちゃんが部屋に入ってきた時、お前、めちゃ嬉しそうにしてたじゃん」 「え? そう? あ、でも梓さんに会えるのは楽しみにしてたよ」 「なんで?」  ―― 「…… 俺の初恋……」  俺にしか聞こえないように、耳元で小さい声で啓太が囁いた。 「うそっ!」 「ホント……」  まじかよ…… だから毎年遊びにくるのか、こいつ。 「まぁでも、小さい時の想いだから、それをどうこうしたいって事は、全くないけどね」  …… って、笑ってるけど、新年早々の啓太の告白に、少々びびってしまって、俺は気もそぞろになっていたのかもしれない。  どんどん悪くなっていく持ち札に、気が付くのが遅かった。
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