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 ―― 迷う心とタバコ味の……(18)

「…… いや、まださ、ちゃんと付き合ってるわけでなくて、でも付き合ってるような事はしてるって言うか……」  未だになんだか、曖昧な関係。 相手が男って言うのが、そもそもよく分からない関係の原因なんじゃって、気もするけど、そこは啓太には言えないし……。 「なんで、ハッキリと彼女に訊かないの? どうして元彼の写真なんで飾ってるの?って、訊けばスッキリすんじゃねえの?」 「それはそうなんだけど、なんだか言いにくくって……」 「ふぅん、そんなもんなのかな」  人んちのお節を、遠慮なくバクバク食いながら、啓太が俺の顔を真っ直ぐに見つめる。 「直は、その彼女の事を本当に好きなんだな」 「え?」  な……、何言ってんの、啓太。 「だってさ、彼女の事で悩んでる直なんて、初めて見たよ、俺」 「……」  な、なんか、何も言えない俺……。 「今までは、たとえ付き合ってる彼女の事でも、悩む事なんて一度もなかっただろ? つーか、彼女の事に関心が無かっただろ?」  そう言えば……、今まで恋愛で悩んだ事って、ないかも……って言うか、何も考えてなかったような気がしてきたんだけど……。 「だから、今回は本気なんかなーって、思った。 それに俺、その彼女に会ってみたい」 「え? なんで?」 「直に、そんな恋する顔をさせる女って、どんなイイ女なのかなーって、興味津々」 「…… 恋する顔……」  何、その恥ずかしい台詞…… 俺、今どんな顔してんの? 「だからさ、ちゃんと訊いてみろよ、写真の事」  啓太は俺の背中をバンバン叩きながら言った。 「そうだな……」  透さんが俺の事を、どう思ってるのか分からないし、俺の透さんへの気持ちが、啓太の言う恋なのかも、はっきりしていないけど。  今度、透さんのマンションに行って、まだあの写真を飾っていたら、訊いてみよう。 そうしたら、このモヤモヤしたものが何なのか、分かるかもしれない。 「啓太って、意外に頼りになるな……」  なんかちょっと、目からウロコって、こういうこと? って感じで、なんとなく目の前が開けたって言うか。 「はっ? 今頃気付くなんて、遅いんだよ!」  ちょっと誉めたら、これだから啓太は……。  ―― でも、ありがとな。  照れるから、言葉には出さないで、心の中でそう言った。  …… でも……、  透さんが彼女のことを今も好きなのか、それできっと、はっきり分かるし、で、俺もその答えによっては……。  そこまで考えると、また胸の奥が苦しくなる。  だからもう、考えるのはやめよう。 次に透さんのマンションに行く日まで。 そう自分に言い聞かせていた。

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