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—— 迷う心とタバコ味の……(40)
俺の後頭部を押さえたまま、最後の一滴まで出し終えて、漸く先輩のそれが咥内から引き抜かれた。
「…… ぐふッ、う…… ッ、んぅッ」
口の中に一杯に含んだままの液体を吐き出そうとする俺の唇を、先輩の手が素早く塞ぐ。
「零さずに全部飲めって」
―― む、むり…… !
喉に少し流れてしまっただけでも、吐き気がする。
「ぐっッ…… ッ」
飲み込むことも出来ず、吐き出すことも許されなくて、堪えきれずにそれは口端から溢れて顎を伝った。
「ほら、零すな」
苛立った声でそう言うと、先輩は手で口を塞いだまま、俺の顔を上に向かせる。 その弾みで、こくっと、喉が動いて、また少し飲み込んでしまう。 途端に咳き込んでぶち撒けそうになる俺を、先輩は上から睨みつけた。
「早くしろよ」
どんなに抵抗しても逃げることはできない。 俺は諦めて、少しずつ飲み込んでいった。
「ゴホッ、ゴホッ」
苦しくて、気持ち悪くて、口の中に残る味と臭いに、吐き気が収まらない。
「可愛そうにね。 ほら、飲みなよ」
横から桜川先輩が、グラスを差し出した。 俺は、ただただ口の中の味を消したくて、そのグラスを受け取って一気に飲み干した。 グラスの中身は、さっきも飲んだ『桜川スペシャル』
「さぁ、じゃ、これから本番だよ」
俺の手から、空になったグラスを取りあげて、桜川先輩がにっこりと笑う。
「ほ、んばん?」
「そう……、直は、さっき俺の手を汚したからね。 覚悟してね」
「いっ…… !」
中途半端に脱がされていたジーンズと下着を全部剥ぎ取られ、桜川先輩に半身をキツく握られて、悲鳴のような声を上げた。
「ほら、直のここ、今出したばっかりなのに、まだまだ元気だよ」
そこは、さっき達った筈なのに、萎える事なく熱く猛り切っている。
―― なんで、こんな時に限って、萎えないんだ。 なんで、嫌なのに、こんなに身体中熱くなってるんだ。
「やっぱり直は、淫乱だね。 男にこんな事をされて、悦ぶ身体なんだよね」
そう言いながら桜川先輩は、俺を長椅子にうつ伏せに押し倒した。 うつ伏せのまま腰を高く引き上げられる。
双丘を掌が撫で上げて、他人に見られたくない秘部を開かれただけで、身体が震えた。
この後にされる行為を予想する事は簡単で、それなのに気持ちとは裏腹に透さんに教え込まれた体内は期待に熱く疼いてる……。
嫌なのに、身体は熱くて、確かに求めている俺。 そんな自分に吐き気がした。
「も、…… や、めて……」
シートの下が板座になっている長椅子に、もう一人の先輩に頭を押さえつけられて、シートの布地に頬が擦れる。
「心配しなくても、気持ちよくしてやるよ」
桜川先輩は、そう言いながら笑っていた。
何か冷たい液体が垂らされて、濡れる感触に肌が粟立っていく。
何度も光るカメラのフラッシュ。
―― もう、駄目だ……。
俺は、全てを諦めて身体の力を抜き、目を閉じた。
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