63 / 351

 —— 迷う心とタバコ味の……(39)

「…… やべ、直の泣き顔見てたら、ムラムラしてきたかも」  さっき俺のジーンズと下着を脱がした先輩が、何を思ったのか俺の目の前で、自分のベルトをガチャガチャと音を立てながら外し始めた。 「はっ、お前変態だな」 「いいじゃん、なぁ桜川、俺に犯らせて」 「あぁ?駄目に決まってんじゃん、俺が犯るの!」  俺の頭の上で、何やら恐ろしい内容の会話が飛び交っているんだけど、俺にはどこか他人事のように思えてならない。 「じゃあさ、直の口でやってもらえよ」  —— はぁ? 口って…言った? 「仕方ないな。じゃ、口でやってよ、ナオくーん」  先輩が長椅子に座って、ファスナーを下ろし取り出したそれは、既に腹にくっつくほど反り返り、先端から透明の液を溢れさせている。  —— 嘘だろ……。  俺は咄嗟に硬く目を瞑って、顔を背けた。 今、起こっている現実から逃げたくて。 「ほら、直、こっち」  だけど、これは夢でも何でもない。 桜川先輩に引き摺られ、俺は長椅子に座っている先輩の前に跪かされた。 「い、やだっ!」  必死に首を振るけれど、先輩に髪の毛を掴まれ、唇にそれを押し付けられた。  むっとした独特の、熱を帯びた臭いに顔が歪む。  たとえ殴られても、絶対に口を開けたくなかった。 強く奥歯を噛み締めて、なんとか先輩が諦めてくれないかと願う。  だけど、先輩は俺の顎を掴み、指が唇をこじ開ける。 「…… んっ、うーー」  無理矢理ねじ込まれ、全部は入りきらない先輩のモノで口の中がいっぱいになって、苦しくて吐き気がした。 「心配しなくても、直のは俺が気持ちよくしてやるよ」  背後からは桜川先輩が、俺の半身に指を絡めて上下に扱き始め、俺の咥内に自身を咥えさせた先輩は、俺の頭を押さえたまま立ち上がり腰を動かした。 「ほら、歯を立てるなよ」 「…… ッ…… ん、ん、っ」  可能な限り奥まで押し込まれ、先端が喉の奥に当たるたびに、何度も嘔吐く。  何処からか、カメラのフラッシュが光った。 「ふ、…… っう…… ん…… ん……ッ」  気持ち悪くて苦しくて、でも自分の下半身に与えられる刺激は気持ちよくて、先輩のモノを呑み込まされている唇からは、熱い吐息と喘いだような声が漏れてしまう。 「へえ、男にこんなことをされても気持ち善いんだ直は」  そんな自分が…… 嫌だと思った。 「ナーオ、ちゃんと舌も使えよ」  咥内を犯している先輩が、俺の髪を掴んで顔を上に向かせ、舌で舐める事を強要する。  —— 誰がそんなこと!  僅かに残っている自尊心を掻き集め、先輩を睨みつけて嫌だと言う意思を伝えた。  だけどそれが、却って自分を追い詰めてしまう。 「その反抗的な眼、なんだよ。煽ってんじゃねえよ」  先輩は吐き捨てるように言うと、俺の頭をしっかりと固定して、腰の動きを速めた。  喉の奥を突くようにピストンされて、何度も嘔吐く。 「—— ッ! うッ、ぅ―ッ!」 「オマエ、本当に鬼だね」 「桜川に言われたくないね」  そう言って先輩は、更に激しく腰を振った。  クックッと俺の背後で笑いながら、桜川先輩も俺のを扱く手を速めていく。  同時にもう片方の手が胸の尖りを刺激した。 「ん…… ッ…… うぅん…… ッ…… くッ」  いつもより敏感になっている身体は、抗う事もできずに簡単に上り詰めていく。  ドクドクと体内が脈打った。  何度も光るカメラのフラッシュも、3人の笑い声も、どこか遠くに感じていた。  気が付けば、桜川先輩の手の中に熱を吐き出してしまっていて、それからすぐに、喉奥に熱い飛沫が飛び、青臭い味が咥内に広がる。  それは、一度だけでなく、二度三度と少しの間隔を開けて、俺の咥内に放たれた。

ともだちにシェアしよう!