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―― 身体と愛と涙味の……(2)
下衣を全て剥ぎ取られて露わになった半身を、お兄さんは手で扱きながら先端から溢れる先走りを舌で掬い、そのまま根元まで呑み込んでいく。
温かくて濡れた感触に包まれて、感じる処を的確に舌で攻められて、もうそれだけで全てを吐き出してしまいそうになった。
「あ…… あっ……」
「なーお、我慢しないでいいから、いつでもイって」
そう言って、お兄さんは、俺のをまた口に含む。
俺はまだこの時、薬のせいで昂った熱をを吐き出すために、お兄さんはただ手伝ってくれてるだけ…… 自慰行為の一種だと思っていた。
だけど、あまりの気持ち良さに瞼を閉じて、いつの間にか快楽だけを追いかけてしまう。
閉じた瞼の裏に浮かんでくるのは…… あの車の中で見た夜景。
…… 長い睫。
…… 黒くて艶のある髪。
…… 見上げてくる、漆黒の優しい瞳。
「……と、おる…… さ、ん……」
喉に当たる程、奥まで咥え込んで、透さんが時々見せる苦しそうな表情に余計に煽られた……。
段々と上下するスピードが速くなり、敏感になり過ぎた蜜口を強く吸い上げられて、下肢がぴくぴくと痙攣する。
「あ、ッ……、も、…… ッイ…… くっ、と、おる、さんッ」
言葉を発した瞬間に、堪えきれずに咥内へ欲を吐き出した。
「…… は、ぁ……、は…… ぁ」
達した後の倦怠感の中、荒い息を吐きながら、重い瞼を開ける事が出来ずに、ただ余韻に浸っていた。
かなり頭が重く、意識が深く沈んでいきそうで、このまま眠ってしまいそうだった。
「なーお、」
俺の名前を呼ぶ声に、薄っすらと瞼を開ける。
「ねえ? 『とおるさん』て、誰?」
目の前のお兄さんの、ふっくらとした唇は濡れていて、俺を覗き込む切れ長の眼は、鋭く光っている。
「…… え?」
俺は思わず飛び起きて、今度ははっきりと目を見開いて、お兄さんの顔を見た。
―― とおるさん? なんで透さんの事……。
「な、んで?」
なんで知ってるの? と、訊きそうになったところで、気が付いた。
―― さっき俺…、なんか言ったよね…。 なんか…口走ったよね……。
それは、落ち着いて思い起こすと、簡単に蘇る。
「……」
なんとも言えない申し訳ない気持ちと、居心地の悪さに言葉も出てこない。
じっと見つめてくるお兄さんの瞳に耐え切れず、俯いてしまう。
「…… あの……」
俯いたまま、なんて言えばいいか悩んでいると、顎を指で掬い上げられて上を向かされた。
「なーんか、妬けちゃうなー」
「え?」
お兄さんの『妬けちゃう』と言った意味を理解する前に、顔に影が落ちて、柔らかいふっくらとした唇が、俺の唇に触れた。
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