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次の日。
重たい身体を無理やり動かして、学校へと向かった。
サボる事も考えたが、単位の事を思うとその選択肢はすぐに消えた。
それに、レイプされたくらいで怯むなんて情けないじゃないか。
か弱い女じゃあるまいし、俺は犯されたくらいで学校を休んだりしない。
俺は昨日の事なんか、これっぽっちも気にしてない。
……気にしてないんだ。
「…………!?」
「……遅かったじゃないか。遅刻ギリギリだぞ」
校門には、一番会いたくない人物である久本寺が立っていた。
「チャイムが鳴る十分前には、教室に居て欲しいのだがな……」
「なにしてんだ、こんなとこで」
――まさか、俺を待っていた?
昨日みたいに犯す為に?
「登校して来た生徒に挨拶をしていたんだ。委員会活動の一環だ」
久本寺は笑っていた。
「ふふ、自惚れるなよ?別にお前を待っていたわけではないからな」
「なっ……!」
顔がかあっと熱くなる。
「さあもうチャイムが鳴るぞ、早く教室へ行け」
「…………」
「…………昼休み、生徒指導室で待っている」
「…………っ!」
久本寺は目を細めて微笑んで、柔らかい声でそう言った。
――…………
――……
――来てしまった。
昼を告げるチャイムが鳴ってすぐ、生徒指導室に向かってしまった。
別にアイツに会いたかったわけじゃない。
何かを期待しているわけでもない。
ドアノブをゆっくりカチャリと回して、扉を開ける。
生徒指導室には既に久本寺が居た。
「本当に来たのか、真中宗次郎」
「は!?テメェが来いって言ったんだろ!」
「俺は『来い』なんて言ってない。『待っている』と言ったんだ」
「同じ事じゃねぇか」
「違う。俺はあくまでお前の自主性を尊重している」
一発殴ってやりたい気分だが、どうせ勝てないのでやめておく。
「で。なんの用だよ」
「昨日言っただろう。お前、俺の犬になれ」
「…………」
「俺の犬になるのなら、お前が留年しないように、俺が教師と話を付けてやる」
久本寺は何処か得意げだ。
「自慢じゃないが俺は教師ウケがいいんだ。お前の留年なんか簡単に取り消してやれるさ」
「取り消す……?」
「どうだ?悪い話じゃないだろう」
「……お、俺は…………っ」
「……さあ、どうする?真中宗次郎」
「俺……は…………」
久本寺のキレ長の瞳が、俺を真っ直ぐに射抜く。
久本寺に見られると、何故か腹の奥がきゅんと疼き身体が熱くなる。
「…………っ」
――俺は、心の底では久本寺の犬になりたがっている?
久本寺の物になって、また犯されたがっている……。
心の奥底……、無意識の部分に、そんな淫らな自分が居るのを感じる。
「真中、返事をしろ」
「……ッ!」
久本寺が一歩俺に近づいて来て、そのまま顎を掴まれる。
そして俺より僅かに背が低い久本寺と、無理やり視線を合わせられる。
「本当に、単位の件……どうにか出来るのか?」
「ああ、それくらいどうにでもしてやる。ただし、お前が俺に服従するならだ」
「どう……すれば、いい?」
「そうだな、手始めに、性器でもしゃぶって貰おうか」
「…………」
「……出来るだろう?」
「…………っ」
俺は跪いて、顔を久本寺の股間の前に持って行く。
おそるおそるズボンのファスナーを下ろし、まだ勃っていない性器に触れる。
「なかなか素直じゃないか」
「う、うるせぇ……留年したくねぇんだよ、単位の為だ」
これは嘘だ。
本当は単位なんてどうでもいい。
留年したくないから、仕方なく言う事を聞いている……。
それを建前にする事で、俺は淫らな自分を認める事を拒んでいる。
そうする事で自分のちっぽけなプライドを保っている。
自分で自分に言い訳をしている。
「ふふ、そうか……そうだよな……」
「はっ……」
まだ萎えているペニスの先端に舌を這わせる。
性器特有の苦みが口に広がるが、構わず舐め上げた。
「留年したくないもんな……」
「…………っ」
久本寺がニヤつきながら、そう言った。
言うと同時に、咥えたペニスを喉の奥へとグッと押し付けて来る。
「ほら、もっと奥まで咥えろよ?」
「んっ……く……」
「留年したくないんだろう?」
「っ……」
吐きそうになるのを堪えて、舌を動かした。
――俺は、命令されて仕方なく従っている。
そういう事に、しておけばいい。
そうすれば俺は、気持ちよくなれる。
気持ちいい事をして貰える。
そんなずるい考えが頭の中に浮かぶ。
「ふふ、素直じゃないか」
「んんっ……」
そんな淫らな心の中を、久本寺には全て見透かされている気がして、ゾクリとした。
青い瞳で見つめられて、もうすっかりコイツに堕ちている自分に気が付いた。
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