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すぐにでもベッドへ寝転がりたい衝動を抑え、風呂場へ向かう。
歩く度にグチャグチャと腸内に留まった精液が混ざり合って気持ちが悪い。
一刻も早くこの精液を洗い流して、全てを忘れてしまいたい。
汗で濡れたシャツを脱ぎ捨て、急いでズボンと下着を下ろす。
下着に精液がべっとりと付着していて、不愉快極まりない。
「クソッ……!」
誰にでもなく悪態を付いて、バスルームの扉を開けた。
シャワーを捻り、温かい湯を浴びる。
俺は先程、風紀委員長の久本寺 唯に犯された。
抵抗出来ず、ただ大人しく犯される事しか出来なかった。
それがプライドの高い俺にとっては悔しくて、情けなくて、腹が立って仕方がない。
だけど、悔しいからといって、久本寺に仕返しをしようとは考えていなかった。
久本寺はとにかく強かった。
俺が戦ってきた誰よりも、圧倒的な強さを持っていた。
認めたくないが俺は、そんな久本寺に恐怖を抱いている。
──アイツとはもう関わりたくない。
情けないがそんな気持ちが、復讐心よりも勝っていた。
「……っ」
恐る恐る、精液が溜まったままの穴に手を伸ばす。
自身の指で、くぱ、と尻を広げて精液が出ていくのを待った。
とろとろと血混じりの精液が、外に流れ出ていく。
この腸内に溜まった液体が、久本寺の物だと思うとかあっと顔が熱くなった。
「んっ……」
穴を広げる事で大方出ていってくれたと思うが、肉壁にこびりついた精液はまだしつこく腸内に留まっている。
少し躊躇ったが仕方なく、自分の太くゴツい指を穴に差し込んだ。
「んっ、はぁっ」
俺の指は、久本寺の指とは正反対にゴツくて太かった。
久本寺の指は細くて長かった……そんな事を思いながら、こびりついた精液を、自分の太い指で掻き出していく。
「…………っ」
掻き出した精液をシャワーで流し、また掻き出す。それを数回繰り返した。
「…………んっ」
同じ作業を繰り返している最中、自分の意思に反して身体がビクリと跳ね上がった。
あの時、久本寺の指で刺激されて快感が走った場所……そこを偶然にも指で触ってしまったのだ。
「あっ……」
恐る恐る、そこに爪を立ててみる。
すると、刺激した場所からピリリと快感が走る。
駄目だと思っても、一度動かした指はそう簡単には止まらなかった。
──アイツは俺を好き勝手に犯して、自分だけ一人でイきやがった。
──俺は快感を与えられるだけ与えられて、それで放置だ。
イかされるのもそれはそれで悔しいが、絶頂を迎えられぬまま放置されてそのままで居られる訳がなく、欲望のままにアナルに差し込んだ指を動かし続けた。
「あっ、んんっ、はあっ……」
バスルームに自分の甘い声と、くちゅくちゅというイヤらしい音が響く。
幸い、家には俺一人で、何をしてもどんなに声を出しても誰にも知られる事はない。
それを良いことに俺の自慰は徐々に、大胆に、エスカレートして行く。
差し込む指を二本に増やし、腸内でバラバラに動かす。
滅茶苦茶にかき混ぜられたアナルからはグチャグチャという卑猥な音が鳴る。
「はっ、はぁっ、んんっ……!」
頭には、尻で感じるなんて情けないだとか、女みたいな声を上げて恥ずかしいだとか、久本寺の事だとかがごちゃ混ぜに渦巻いている。
だけど俺には、それら全てすらただの興奮材料にすぎなかった。
久本寺にされた事の全てが、その時の記憶が、感覚が、思いが、快楽に変わっていく。
「んあっ、はあぁっ……!」
いつの間にか触っていない筈の性器まで勃ち上がっていた。
ペニスの先端からは、とろとろとした先走りの液が溢れ出ている。
「あっ、あっ、んんっ」
尻の奥のとある一点を、理性を捨てて欲望のまま、指で擦り続けた。
無意識に、腰や足が痙攣する。
そして徐々に、限界に近づいていく。
ラストスパートと言わんばかりに、指を動かす速度を速めた。
「あっ、ああっ、んああぁっ!」
より一層大きな声を上げて、性器から白濁とした液体を勢いよく吐き出す。
ペニスから飛び出した精液は、バスルームの床や壁をべっとりと汚した。
風呂から上がった俺は、すぐに自分の部屋へと駆け込んで、ベッドに怠い身体を預けた。
「ううっ、クソッ……!!」
枕に顔を埋めて、羞恥心に耐える。
そして酷く後悔していた。
──久本寺の事を忘れるんじゃなかったのか?
何をやっているんだ、俺は。
自分で自分が分からない。
久本寺にされた事の全てが屈辱で、悔しくて堪らないのに、それなのに……
何故か久本寺の事を思い出すと、身体が熱くなって仕方がないのだ。
身体が久本寺を求めてしまうのだ。
また滅茶苦茶に犯して欲しいと、そう心の何処かで思ってしまうのだ。
久本寺の事を忘れるどころか、自慰をした事によってより一層、あの出来事が深く胸に刻み込まれてしまった。
「クソ……」
もう一度そう呟いてから布団にくるまって、まるで現実から逃げるように意識を手放した。
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