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「親父さんも兄さんも確かにイケメンだけどな、お前もかなりの美形なんだぞ?」
「そ…なこと…」
「普段、ほとんど鏡も見てないだろ?
中性的で可愛いじゃないか。
美形モデルを見飽きてる俺が、一番綺麗だって思ってるんだ」
「……っ、そな…ことない…」
「前髪と分厚いレンズの眼鏡で隠してたって、丸わかりなんだよ。
一番綺麗なのは霖だ」
「……っ、…っ」
ホロ、と、大きな瞳から涙が零れ落ちる。
一人だけ、家族とかけ離れた容貌をしていたから、からかわれたり似てないと言われ続けた時期があった。
虐めの対象になり、家族へ勝手にコンプレックスを抱いて壁を築いてしまっていた。
「急に自信を持てって言われても困るだろ?
でも、今回はいいチャンスだと思うんだ。
霖の心のなかには、こんなに綺麗な世界がある。
それを具象化する力量もある。
方向は違うかも知れないが、綺麗を作る仕事に変わりはない」
「……っ」
「そろそろ、スタッフロールに自分の名前を入れような?」
「……っ、う……、うん…」
「少しずつ、な」
「んう…」
頬を伝う涙を、秋斗が優しく吸い取る。
甘えるように頬をすり寄せると、額や瞼に口づけが落とされた。
二人でギュウッと抱き締め合い、ゆっくり眠りへと落ちていく。
『好き…。
秋斗さん、大好き…っ。
自信を持って、あなたの隣に立てるように頑張るよ。
そして、いつか…。
あなたに相応しい僕になれたなら、一緒に歩いてくれますか…?』
愛しい香りに包まれて、夢の中で呟く。
『あなただけの僕になれたら…』
霖は知らない。
接待と言っていた秋斗が、両親や兄と話し合いの場を設けていたことを。
結婚を前提に付き合っていきたいと伝えたことを。
そして、霖がプロジェクションマッピングで作り上げた世界のような夜空の色の石…。
ラピスラズリが嵌め込まれた指輪を、枕元に忍ばせてあることを…。
おしまい。
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