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第7話

 頻度で言えば、週に5日は、トウヤは玄関まで来る。  仕事以外にも日用品や食料品の買い出しから戻った時も含め、まあ大体は、俺を出迎えてくれる。  あられもない恰好で。  決して屋外になど、出られない恰好で。 「おかえり!」  働け働けと、小言を浴びせられていた時より余程いきいきと、出迎えてくれる。  あの腹の落書きを見た時はどうしようかと思ったが、犬という発想自体は、そう悪くなかったとも思う。  確かに猫よりは犬だろうし、飯を食わせトイレの世話をし健康を観察し、という部分では、ペットに対するそれとも似ている。  まあ、愛玩動物には決してしないような行為も、散々しているのだけれど。 「ただいま」  所謂「おすわり」の姿勢で俺を見上げる、トウヤの頭を撫でる。  普通に直立して待機している時もあれば、こうして主人の帰宅を待つ番犬よろしく、膝を曲げて腰を下ろしている時もある。  今回は後者だ。それも当然で、右手首と右足首、左手首と左足首を、それぞれ短いチェーンで繋いである。腰なり膝なりを、常に曲げていなくてはならない。  出来れば緊急事態も考慮し、俺が不在の間は手足くらい自由にさせておきたかったのだけれど、トウヤはそれでは不満らしい。  何度言っても自分で弄るのをやめないので、物理的な対処に出るしかなかった。  拘束する間も一切嫌がる素振りを見せなかったし、今もにこにこと、至って上機嫌だ。 「リビング入ってて。すぐ行くから」 「うん」  にこやかに答え、ぎこちない四つ足でリビングへと向かおうとした。  その後ろ姿を見て、俺は引き留める。 「待った」 「ん?」 「出てる」 「ぅ、あっ……」  すっかり拡張の進んだトウヤの尻穴から、赤い粘膜が覗いていた。  それを靴下越しの爪先で、つつく。  いつ頃からか、トウヤのそこはすぐに露出してしまうようになった。今日はずっと腹圧のかかりやすい態勢を強いていたことも一因だとは思うが…… 「また勝手に弄ったろ」 「だ、だってぇ……もう、なんか入ってないと、疼いて……」 「我慢しろって言わなかった?」 「出来なかった!」 「お前なあ……」  堪え性のないのは、相変わらずだ。  言っている傍から上体を廊下に突っ伏し、俺の足に擦りつけるようにして、腰を振っている。  その合間にも不自由な手を尻に添えて、更に穴を開こうとしている。 「キオぉ……入れて?」 「何をだ? 足か?」 「それもいい……」 「下ろしたての靴下ダメにしたくないから却下」 「えー……」 「あと、先に飯だ」 「えええー……」  トウヤは大いに不服を訴えている。  拘束されていて自分だって日中何も食べていないくせに、容易く腸壁を溢れさせてしまうくせに、靴を脱いだばかりで靴下を履いたままの爪先が今にも入ってしまいそうなくせに、それでもまだ、不充分だと訴えている。  そう焦るなよ。  ひとつひとつ、じっくり味わえばいい。 「俺は今すぐ欲しかったのに……」  まるで、しょんぼりと伏せられる、犬の耳が見えるようだ。  そういうところも、可愛いと思う。  それに日中、寂し思いをさせているのは確かだ。 「まあ、そうだな」 「?」  わざとらしく嘯いて、脚を退かす。  入浴ついでにあれこれするせいで、寝室、リビングに次ぎ第三の置き場所となった脱衣場の玩具を取りに、リビングより手前にある引き戸を開けた。  開けてすぐ目につくカゴから、少しだけ悩んで1つを選ぶ。  ……やっぱりこれかな。  散々1人でも遊んでいたみたいだし、中は充分、濡れている事だろう。 「飯が終わるまで、代わりにこれ、入れておいてやるよ」 「……うん」  トウヤは素直に頷いて、改めて尻を向けた。  彼も今では、ペニスの尻尾を気に入ってくれているみたいだ。  露出してしまった腸壁を押し込めるように、偽物の亀頭を宛がい、沈めていく。  ずぶずぶと、そこが本来の定位置であるかのように、すんなりと飲み込まれていく。実に慣れたものだ。  そういった変化もあるが、何より、あの頃と最も違うのは、尻尾の長さ。  最初は半分は外に出ていたディルドも、今ではその殆どが、腹に収まるようになった。なかなかに現実味のあるサイズのペニスが、いやらしくトウヤの尻から生えている。  ああ、そうだ、そのうち、尻尾を2本にするのも、いいかもしれない。  それとももっと長くして、尻尾の先をフェラさせようか。  きっと、可愛らしいに違いない。  外の景色なんて見なくても、楽しい思い出も、それを切り取った写真も、たくさん増えていく。 「じゃ、着替えたら行くから、リビングで待ってな」 「んっ」  トウヤは嬉しそうに笑うと、短い尻尾を振りながら、犬よりも不器用にリビングへと向かう。  廊下には点々と、先走りなのか腸液なのか涎なのか分からない液体が、足跡のように残っていた。  とりあえず、1人で勝手に弄った罰に加え、廊下を汚した罰も追加出来そうだ。  さて、今夜はどうしてあげようか。  人の事は言えない笑みを口元に浮かべながら、ネクタイを解いた。

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