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第6話

 挿入生活に変化が訪れたのは、それから更に数ヶ月後。  入れっぱなしだったものを時折外すようになったのは、トウヤが悪さを覚えるようになったからだ。  後孔に入れられた道具を使って、自慰をするようになった。射精せずとも達する事が出来るようになったのは喜ばしいが、同時にひとり遊びも覚えてしまったらしい。  尤も、言いつけを破る事でわざと俺に叱られている節はある。俺の与える罰を、楽しんでいる。故に、抑止力としては機能していない。  そんなわけで、アナルの方は塞がずにおく事も度々あった。  管の入ったままのペニスとは違い、こちらは多少はまだ、排泄の制御が出来るようだ。それも時間の問題だろうし、漏らしてしまう事も皆無ではなかったが、その処理も手慣れたものだ。  だから今日は、アナルを塞がずに家を出た。  まあ、道具なんてなくても、トウヤには自在に動く手があるのだが。 「んっ、んっんっ……」  出迎えがなかったから何事かと思えば、必死で尻に指を突っ込み、へこへこと腰を振っていた。  まるで土下座でもするような姿勢で蹲って、ペニスを床に擦りつけながら、必死にアナルを穿っている。 「トウヤー?」 「ん……ぁ、キオ……おかえりぃ」 「一応訊くけど、何やってんの?」  ここで慌てたり動じたりしないのが、トウヤらしい。平気で「仕事辞めちゃったー」と嘯いていた頃を思い出す。  トウヤは顔だけ少し上げると、俺に尻を向ける。 「お尻がさびしくてさぁ……キオ、ここに太いの入れてよぉ」  すっかり出来上がっている様子の熱っぽい声で、トウヤは緩んだ尻穴を指で拡げる。  露骨なお誘いらしく肉体までもが大胆に、縦に割れてきたそこは、くぱ、と大きく開いた。 「暫くはお預けって言わなかった?」 「がまん出来ない」 「昨夜、腹痛いからもう無理ってヒイヒイ泣いたの誰だっけ?」 「今なら大丈夫な気がするから、入れてよぅ」  奔放なトウヤに、昨日は中で膨らむタイプの玩具で罰したばかりだ。結腸にまで届く代物で、全体が空気で膨らむようになっている。  万が一破裂でもしたら堪ったものではないので大分慎重に膨らませたのだが、トウヤはすぐに痛い苦しいと泣き言を零したのだった。  本当につらかったのか、大袈裟に騒いでいたのか、なんとも判別しづらいところではあるけれど、昨日は嫌がったそれを欲するくらいには、疼いているらしい。 「……そんなに欲しい?」 「欲しい……早く……太いの入れて……」  そうか。  そこまで言うなら、くれてやろうか。 「じゃあローション持っておいで。準備するから。あと念の為、汚してもいいようにタオルも」 「うんっ」  元気な返事をして、トウヤはすぐに収納ケースを漁りにいく。  ……さてと。  俺はまず部屋着に着替え、洗面所へ向かった。念入りに、手を洗う。  改めてリビングに戻ると、トウヤは待ちきれないといった様子で、両手を床につき腰を浮かせた状態で、タオルの上に陣取っていた。 「あれ、何も持ってないの? じゃあ、チンポ入れるの? いいよ、いっぱい中に出して」  言いながら早くも俯せになり、はいっ、と腰を掲げてみせた。  でも残念。  手ぶらでも、入れられるものは他にある。  俺は用意されたローションを、たっぷりと手にまぶした。  濡れた指を、すっかり綻んでいるアナルに宛がう。 「んっ……ぁ、指……やっぱ、自分でするのと、違う……」  ぐにぐにと弄ると、すぐにトウヤはとろんと蕩けた目で呟いた。  熱く絡みつく感触はあるが、きつさよりも柔らかさの方が強いだろうか。まあさすがに、指の1本や2本程度、難なく受け入れてしかるべきではある。 「もっと……」  けれど到底こんなものでは足りず、俺だってこれで終わらせるつもりはなく、指を増やす。  3本、4本、そして5本。  指を増やすにつれ、きつさも増してくる。 「っ……キオ……なに、しようと、してる……?」  さすがに、察したらしい。 「ん? フィスト」 「ぁ……やっぱり……?」  えへへ、とトウヤは緩く笑った。下半身だけでなく、頭も笑い方も緩い。そして、特に驚いた様子もなかった。  可愛くていいと思う。  それにしももう少しくらい、嫌がるかと思ったけれど。  トウヤもその気になっているなら、話は早い。  束ねた指を、押し込んでゆく。 「ぁ、ああっ、あッ……す、ご、ぁっ、あぁぁっ……」  トウヤはだらだらと涎を垂らしながら喘いだ。痛くはないようだ。やはり昨日の反応は大袈裟だったという事か。それは今度、仕置きのネタにしよう。  ゆっくりだけれど順調に、俺の手は肉の壁に沈んでいく。  親指の付け根が入ってしまえば、最初の関門は突破だ。  見事に、手首まで咥え込んだ。 「あ、ぁ……入っ……た……?」 「ああ。写真撮ってやるよ、ほら」  ポケットから携帯を出し片手で操作すると、薄っすら汗ばんだ背中と一緒に、深々と拳を咥えた尻を写してやる。  それをすぐに、見せてやる。 「ホントだ……へへ……、やったぁ……」  どうやら喜んでいるらしい。まあ、トウヤの恥じらいは期待していない。  ひとまず携帯は床に置いて、続きを始める。  そう、まだ終わりじゃない。 「それじゃあ、もっと喜んで貰おうかな」 「へ……?」 「まだ、イケるだろ?」 「え、いやっ、ちょっ……、ぅ、ぐ」  油断したところへ、容赦なく力を込める。  まだまだ。入れて終わりなんて、そんな、甘い甘い。  既に何度も結腸まで開発したんだ。手首を捻り進路を開きながら、強引に更なる侵入を試みる。 「ぅあ、あっ、奥っ、奥、入って、きたぁ……っ! おく、おぐ、がぁ……ッ!」  角度を変え力加減を変え、更に深いところを目指す。  ああ、うん、いいなぁ、これ。  正に滅茶苦茶、という言葉が相応しい。  俯せを維持する事も出来なくなり、横臥してばたばたと暴れるように感じ入っている。  のた打ち回るように悶えるトウヤは愛らしい。  俺はまだ、ここにペニスを入れても快感を得られるけれど、むしろトウヤの方がそろそろ、それでは足りなくなってきてるのではないかと思う。  だらだらと獣のように涎を垂らしながら、先走りの止まらないペニスを揺らし、恍惚に耽っている。  そのうち俺の手を見ただけで勃起するようになったりしたら、面白いかもしれない。 「ぅあ、あああっ、ひ、ぅ……ッ、ぁ、はっ……ッく、ァアアッ……!」  人並み程度には太さのある腕を少し捻ると、その何倍もの反応になって返ってくる。  可愛いなぁ可愛いなぁ。  手首と肘の中間くらいまで挿入するとそれ以上は進むのをやめ、腕を捻ったり指を動かしたりして観察してみる。  そのうち余裕が出てきたのか、トウヤは自分で自分のペニスを扱き始めた。  扱いたところでカテーテルが邪魔をして、ちゃんとした射精など出来やしない事は分かっていて。 「どう? 満足のいく太さ?」 「ぁ、く……ッぅ、あ、ヤバイ、これ……ッ」 「答えになってない」 「ダメ、ダメだって、ひ、ぅ、ァア、ア、ヤバイ、これ、すご……っ、ぁ、ああぁ……ッ」  ……うーん。  呼びかけには気付いているようだけれど、言葉は理解していないようだ。  その一方で夢中でペニスを扱き、僅かながら自ら腰をくねらせているようにも見える。  今日は、こんなものにしておくか。  俺は腹の中を弄る事をやめ、片手をトウヤの腰に添える。 「はい、おしまい」  聞こえていないのは承知で一応そう合図をしてから、ぐっと腰を掴んで床に押しつける。  そして、突っ込んでいた腕を一気に引き抜いた。 「ぁああああッ……! ぁ、ああ……ッ、……っ、ぁあ……」  その刹那、トウヤはここ最近で1番大きな声を上げた。絶叫と言ってもいい。  リビングの壁は隣家に接していないとはいえ、ちょっと近所迷惑を気にするレベルだ。  そうして叫んだかと思えば、ぱたりと全身の力が抜けてしまった。  どうやら気絶してしまったらしい。  管が通されていなければ、きっと失禁していたに違いない。  その代わりに隙間から、白く濁った体液がとろりと漏れていた。  今ので射精したのか。  本当、才能あるなトウヤ。  後ろの方はどうなってしまったのか、ついさっきまで腕なんぞを突っ込んでいたアナルも、確認する。 「……あ」  縁は完全に捲れ、中の腸壁が露出していた。  端的に言えば脱肛というやつだ。  真っ赤な粘膜が、とてもいやらしい。 「…………」  カシャ。カシャ。カシャ。  しっかり写真に収めてから、押し戻してやる。  目が覚めたら、トウヤにも見せてやろう。

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