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 『来年も再来年も、ずっと……』(1)

 12月24日は、世間一般的にはクリスマスイブと言われていて、誰もが何となく特別に思う日。  何週間も前から、街にはクリスマスソングが流れ、店頭にはクリスマスの関連商品が並ぶ。  そして、仲良さげに身を寄せて歩くカップルが、普段よりも多く感じる日!  クリスマスイブって、普通でもハッピーな日。  だけど、俺と透さんにとっては、きっとどのカップルよりも1年で最もハッピーで大切な日なのであーる!  ……んだけど……。 「はぁぁ……寒っ……」  冷たい風が吹き抜けていく駅のコンコースで、俺はもう30分くらい愛しい恋人が来るのを待っている。  クリスマスイブだと言っても、普通に平日な今日。透さんは勿論、朝から仕事で……。  でも今年は……。 『去年、俺が仕事で遅くなって行けなかったイルミネーション、行ってみる?』  って、透さんが誘ってくれたんだ。 『え? じゃあ、俺、点灯の瞬間を見てみたいなぁ……って、それは無理かな』 『点灯するのは何時?』 『ええーっと、あぁ、18時からだって、絶対無理だよね』  18時からなんて、透さんが間に合うには遅くても17時には仕事を終わらないといけなくて。そんなに早く終われないって事は俺だって分かってる。  だけど点灯の瞬間なんて見れなくても、透さんと一緒にイブを過ごせるってだけで俺は幸せだから、それでいいって本当に思ってたんだけど……。 『いや、元々今日は早く終われる予定だったし、18時なら大丈夫だよ』  透さんがそう言ってくれたもんだから、俺は飛び上がるくらい嬉しかった。 『えっ? ホント? 透さん、無理してない? 別にイルミネーションは22時までやってるし、点灯はまた来年でも良いんだよ?』 『大丈夫だよ。点灯の瞬間って、感動するらしいね。俺も見てみたいから』  ……ってことで、本当はイブの日はあの公園で待ち合わせるって決めてたけど、今年はイルミネーションの順路入り口に、一番近い駅にした。  順路入り口からゴール地点の公園までの距離は、約1.5km。  光のアーチの下を歩いて楽しむイルミネーションは、テレビや雑誌なんかにも紹介されていて、全国各地からわざわざ泊りがけで見に来る人も多くて、有名なところ。周辺のホテルも、半年前には予約で埋まってしまうらしい。  交通整理がされていて、入場するまでは列に並んで待たなければならない状態。  だから時間ぎりぎりに行っても、点灯の瞬間を見れないかもしれないんだ。 「やっぱり平日に点灯の瞬間を見るなんて無理だったよなぁ」  点灯予定時間は、18時。 たぶん2時間くらい前から並ばないとダメだったんじゃないかな。  18時まであともう20分を切っている。  こんなに混んでいて、もっと早くから並ばないといけないなんて、そんなところまで気にしてなかった。  もっとちゃんと調べておけば良かったな。簡単に見たいなんて言っちゃって、また透さんに無理させてしまったかもしれないのに……。

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