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 『来年も再来年も、ずっと……』(2)

 ――透さん、まだかな……。  メールしてみようかな……。あとどれくらいで着く? って。  携帯を取り出して、文字を打ち込んで………でもやっぱり思い直して入力した文字を全部消して。  だって、遅れているとしても、来れないとしても、その理由は仕事だって分かってるから、俺がメールなんてしたら、それだけで透さんの負担になったりしないかな……って思うから。  だから透さんから連絡くるまでは待っていよう。  携帯をコートのポケットに入れながら、改札から次々と溢れるように流れ出てくる人の波へ視線を巡らせた。 「あ……」  こんなに離れているのに、こんなに人でいっぱいなのに、なんで一発で見つけてしまえるんだろう。  少し足早に階段を下りてくる透さんの、艶のある綺麗な黒髪がふわりと風になびいてる。  自動改札機をタッチして、スルリとすり抜ける姿がカッコよくて見惚れてしまう。 「透さん!」  駆け寄って呼びかけた俺に気が付いて、少し控えめに右手を上げて、透さんは微笑んだ。  ――くぅぅ! やっぱり透さんはカッコいい! 「ごめんね、直くん。遅くなってしまって。ここ、結構風が入ってくるね。寒かったでしょう?」 「ううん、大丈夫。そんなに待ってないから」  さっきまで、ちょっと不安だった気持ちも、透さんに逢ってしまえば何処かに吹き飛んでしまう。 「じゃあ、急ごうか」  俺の手を取って、人混みを躱すように足を進める透さん。  ――うわっ、こんな所で!  って、一瞬焦るけど、でもこれだけ人が多いと、俺たちが手を繋いでる事なんて、誰も気が付かない。 「あ、でも透さん、もう会場入り口までの順路は人がいっぱい並んでて、もう点灯の瞬間は見れないだろうから、そんなに急がなくても良いよ?」  もう絶対間に合わない。  それならそれで、ここの誘導順路の通りは、レストランやカフェや商業ビルが並んでいて、クリスマス時期には街路樹にイルミネーションが施されていて、レトロなガス灯やライトアップされた教会なんかも観ることができる雰囲気のあるエリアだから、ここだけでもゆっくり歩いて楽しむ事はできる。 「うん。でも、もしかしたら、見れるかもしれない場所があるんだ。ちょっと走るけどいいかな?」 「え? ホント?」  どこだろう? と首を傾げながらも、俺の手を引っ張って、少し前を走る透さんの斜め後ろから見える姿がなんだか嬉しくて。  俺はもう何も考えずに、誘導されるままに、透さんと一緒に走った。  呼吸が乱れないように、規則正しく吐く白い息が冷たい夜風に流れていく。  はっ、はっ、と、二人の吐く呼吸の音だけしか聞こえてこない気がしていた。

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