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『来年も再来年も、ずっと……』(3)
会場までの順路とは違う通りに出て走っていく。どうやらイルミネーションのゴール地点の会場になっている公園の方向に向かっている。
「透さん、もしかして、イルミネーションの出口の公園の方から見るって計画?」
息を切らしながら訊けば、透さんはちょっと悪戯っぽい眼差しで俺に視線を向けた。
「そう思うでしょ? でも違うんだ」
「えー? どこだろう?」
「それは着いてからのお楽しみ」
そう言って、俺の手を握り直すと、透さんはさっきよりも走るスピードを上げた。
俺は最近運動不足だったせいか、少し息が苦しくなってきてるけど、なんかこういうのって、ちょっとワクワクする。
人通りの少ない細い路地を縫うように抜けて行けば、公園のある賑やかなメインストリートに出る。
右に曲がれば公園なんだけど、やっぱりその周辺はたくさんの人が集まっていた。
透さんはそれには眼もくれずに信号を渡り、公園と反対の方向へ走って行く。
「と、透さん……」
迂回していく順路よりは近道だけど、ほぼその順路と同じくらいの距離を結構な速さで走っていたから、俺は情けないけどもう限界だった。
「ごめん直くん、大丈夫?」
足が縺れそうになってきた俺に合わせるように、走る速度を緩めて、透さんは繋いだ手を引き寄せた。
ポスンと透さんの肩に額をくっつけて、ぜぇぜぇ言ってるから全然大丈夫じゃないんだけど。
「はぁ、はぁ、だ、だいじょうぶ」
透さんはそんなに息上がってないのに、俺ってホント情けない。
「ほら、もう着いたよ。ここの24階なんだ」
「……え? ここって……」
透さんが指さした目の前の建物は、たぶん市役所本庁舎。
「ここにね、無料で開放されている展望台があるんだよ」
「へええ? 知らなかった」
入口を入ってすぐ正面にエレベーターが並んでいて、そのうちの一基に『24階展望ロビー直通』って書いてある。
「もう、時間がないね。急ごう」
俺たち以外に待っている人もいなくて、1階で止まったままになっているエレベーターに二人して飛び乗った。
24階を押して、エレベータが上昇し始める。
フロアの数字が変わっていくのを見つめながら「早く、早くぅ~」って言ってたら、透さんはクスっと笑って俺の肩をふわりと抱き寄せた。
視線が合って、距離が近づいて、それでも笑いながら「早く早く」と、まだふざけてる俺の唇がキスで塞がれて、声は透さんの咥内に吸い込まれていった。
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