『あの…そう言えば西野さんなんで東京にいるんですか？』 『明日こっちで会議だから。』 『あっ…じゃなくて、最近は毎年クリスマスに新人対象の研修なかったでしたっけ？』 『あぁ、それな。なんか今年は異動したてだからって免除されたみたい。』 『なるほど…』 『あのさ…ようは相談なんだが…』 『なんでしょう…？』 『お前、俺の恋愛相談に乗ってくれないか？』 『はぁ？』 『いや、俺は今まで自分の欲しいものは全部手に入れてきたんだけど…』 『それは知ってます。』 『今回山崎に出会って変わった。』 『はぁ…それで？』 『それでだな、自分は恋愛下手であることに気付いた。』 まぁ確かに下手って言えば下手なのか？ 自分の欲しいものは無理矢理にでも手に入れて… まず順序ってもんを知らないよな。この人は… 『で、俺はどうすればいいんですか？』 『俺の疑似恋愛に付き合え。』 『はぁ!?』 『お前ノーマルってことは普通に彼女とかいたこともあるんだろ？』 『ありますけど…』 『恋人同士とは何かということを教えてほしい。』 『いや、言ってる意味がわからないんですけど。』 『だから、俺と偽りの恋人同士になって恋愛を教えてほしいって言ってんだよ。』 『はっ…はぁぁぁぁぁ!?』 そんなこんなで結局疑似恋愛ごっこが始まってしまった。 期間は一年。 俺32歳だし、そろそろちゃんと彼女作って落ち着きたいんだけどなぁ… なんでこんなことになってんだろ…。 はぁ… 溜息をつきながら家路についたのだった。