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51 幸せになるまであと24日。
『山崎!!』
『なんでしょう?』
部長の呼び出しに俺と話をしていた山崎が立ち上がり駆けて行く。
『えぇっ!?なんで俺なんですか!?』
山崎の大きな声が事務所に響き渡った。
『城田とか、その下も入ってきてるし、付き添いはそいつらで…』
あっ…研修か。
研修の付き添いの話だな。
耳を傾けると部長が続ける。
『いやな、お前には悪いと思ったんだが、人がいないんだよ。城田はまた他の研修。その下は頼りなさすぎる。』
『えぇ…そんな…』
『なんだ、お前その指輪の彼女とデートか?』
『…』
『部長!!』
気付いたときには俺の体は勝手に動いていた。
『なんだ天野。』
『その付き添い、俺が行きましょうか?』
『えぇっ!?』
隣の山崎が驚いた表情で俺を見る。
『まぁ、誰かが行けばいいだけだからな。山崎どうだ?』
『天野さんいいんですか?』
『いいよ。』
『ありがとうございます!!お願いします!!!』
深々と頭を下げ、山崎が自席へと戻って行った。
『…にしても、天野が名乗りを上げるとは珍しいな…。面倒臭がりのくせに。』
『うっ…いや、初心に戻らないとなぁと思いまして。』
ハハハと笑いながら一礼して自席へと戻る。
言ってしまった。
部長の言う通り俺はかなり面倒臭がりだ。
なのになんでこんな研修の付き添いを引き受けたか…
そんなの答えは一つしかないだろう?
西野さんに会うため。
ストーカーかよ。
自分にツッコミを入れたくなる。
だけどこれで25日を一緒に過ごせるのは間違いない。
仕事で行くけどそんなことは関係なくて、どうやって誕生日を祝うかだけを考える。
『天野さん、ちょっと。』
山崎に手を引かれ休憩所へと移動した。
『なんだよ。』
『やっぱり天野さん、西野さんとなんかありますよね?』
『なんかってなんだよ。この前話しただろ?疑似恋愛ごっこ中だって。』
『いや、それ本当に疑似ですか?本当は付き合ってるとか?』
『ない。』
『あれ?キッパリ言いますね。研修の付き添いも自ら名乗り上げてたし、てっきり付き合っているものかと…』
『ねぇよ。』
『じゃぁなんで研修行くんですか?』
『ん?大阪に行きたかっただけ…』
見え見えの嘘に山崎は気付いていないようだった。
本当に疑似ですか?だってよ。
付き合いは疑似だけど、俺の気持ちは本物。
なんてことは口が裂けても言えねぇ。
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