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53 幸せになるまであと4日。
『天野。』
『なんですか?』
小宮さんに呼ばれ事務所を出る。
『呼び出し。』
そう言われ休憩所に入ると西野さんがいた。
『西野さん!?』
『よう。久しぶり。』
本当に久しぶりだ。
研修の準備があるからと土日もなかなか会えず、メールや電話も少なくて、そろそろ西野さん切れだな…と思っていた矢先だった。
『どうしたんですか!?』
俺がそう聞くと小宮さんは手を上げて休憩所を出て行った。
俺はそれに頭を下げる。
『どうしたんですか?って、天野切れ?』
もう…
なんなんだよこの人は…
俺の思っていることをなぜもこんなにわかって、嬉しい一言をくれるのだろう。
『な、なんですかそれ!!冗談キツイですよ!!』
必死に否定して笑う。
『いや、案外本当のことなんだけどな…まぁいいや。今日は研修のことで部長に話があってこっち来た。』
『そうですか。』
『で、お前なんで研修来ることにしたの?』
『は!?』
『いや、部長がさ、面倒臭がりの天野が自分から手を挙げたから珍しくてな…とか言って笑ってたから。』
『あ…しょ…初心に戻ろうかと思って!!最近ダラダラ仕事してる感じするし!!!』
『そっか…てっきり俺に会いたいがために来てくれるもんだと思ったんだけどな…』
はぁ!?
ま、まぁその通りだけど…
でもそんなことは口が裂けても言えなくて…
『な、何言ってんですか!!そんなわけないじゃないですか!!』
この人、本当どこまでが冗談かわからない。
俺のことをからかうのも程々にしてほしい。
『まぁ、25日会えるってことだよな。嬉しい。じゃ、俺行くわ!!』
そう言って西野さんは休憩所を出て行ってしまった。
恐るべし、西野巧。
俺の心をがっしりと鷲掴みにして逃げおった。
あぁぁぁ。
本当、俺どうしたらいいんだろう。
宙を仰ぎながら手で顔を覆った。
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