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60 幸せになる日-6。
ホテルに着き、西野さんの携帯を鳴らす。
何度かコールしてから留守電になってしまった。
なんでだよ!!!
時刻は23時40分。
もう!!どこにいんだよ!!!
ホテル中を走り回って、もしかして!?と思い、懇親会が行われていた会場へと向かった。
『西野さん!!』
そこに西野さんの姿を見つけ、大声で叫ぶ。
『天野?どうした?息切らして。』
『えっ?ハァ…えっとこれには色々事情が…。もう片付け終わりました?』
『今終わったとこ。』
『来てください!!』
驚く西野さんの腕を掴んでズンズンと歩き進める。
『どうした?どこ行くんだ?』
『お祝いしましょう!!!』
何も言わずついて来てくれる西野さんを部屋に入れ、椅子へと座らせた。
時刻は23時55分。
ギリギリセーフだな。
『西野さん、お誕生日おめでとうございます!!』
そう言うと、西野さんが驚いた顔をした後、すごく嬉しそうな顔をして喜んでくれた。
『ありがとう。』
『ケーキ買って来たんで…』
そう言いながら袋からケーキを出すと、グチャグチャだった。
ちょっとイキッて走りすぎたな…
『あれ?グチャグチャ。お前、俺探して走ってくれたの?』
『は…はい…。25日の間におめでとうって言いたくて…』
『ありがとう。』
そう言って、向かいに座る俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれた。
時計は0時を廻った。
これで疑似恋愛ごっこは終わりだ。
俺はこの一年のお礼を言うと決めて来たから…
『西野さん、一年間ありがとうございました。西野さんに恋愛教えるってことだったのに、色々と俺が教わっちゃって…すごく楽しかったです。本当にありがとうございました。』
立ち上がり深々と頭を下げた。
『…なぁ、天野。俺さ、教えてもらい忘れたことあんだけど。』
『なんですか?』
『付き合ってからのことは色々教えてもらったけど、告白の仕方教えてもらうの忘れてた。』
『告白の仕方ですか?』
『うん。それ大事だろ?いつも俺、それで失敗してるんだと思う。』
『そうですか…確かに山崎の時も強引でしたもんね。』
『どうやって告白するのがいいんだと思う?』
『うーん。「好きです。」とか?ストレートな方がいいと思うんですけどねぇ…』
『天野はそういう告白好き?』
『そうですね…自分で言うのも言われるのも、どっちもストレートな方が好きですかね…』
『そっか…』
『…』
『天野…』
『はい?』
『好きだ。』
『えっ?』
『俺はお前が好きだ。』
『ちょっ…西野さん!?』
『俺はお前が好きなんだよ。お前は?』
『俺は…』
『俺は?』
『俺も…西野さんが好きです!!!』
そう言った瞬間に立ったままだった俺の腕を西野さんが掴む。
そのままグイッと引かれ、テーブルの横に移動するとギュッと抱きしめられた。
『天野、キス…していい?』
耳元でそう囁かれ無言で頷くと、お互いに少し離れて唇を重ねる。
今までの事故のようなキスではなく、お互いがお互いを確かめるような深い深いキス。
ハァハァ…と肩で息を整えながら離れると、もう一度キツく抱きしめられた。
『西野さん…なんでキスするんですか?』
『恋人同士だからだろう?』
クスクスと二人で笑い合って、もう一度キスをする。
「疑似ですけどね」なんていういつものツッコミはしなくて、すんなりとキスを受け入れた。
あぁ…俺、幸せだ。
こんなに幸せでいいのだろうか…?
もう終わってしまうと思われた幸せな時間が、これから先も続くのかと思うと自然と涙が溢れた。
『天野?』
『これは汗です。』
そう言いながら西野さんの胸で涙を拭ったのだった。
end
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