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第378話 番外編~和樹ver.~女神との出逢い②<完結>
ドキドキ…高鳴る胸に手を当て深呼吸し、トイレのドアを開けた。
鏡に映る自分の火照ってる顔を見つめてる女神の姿が見えた。
鏡越しにドアの前に佇む俺をチラッと見て、また目線を戻し、そして手を洗う。
近くで見ると……綺麗な顔が一段と際立つ。
うわぁ、凄い綺麗!
男の人に綺麗って言ったら失礼かも知れないけど……二重で漆黒の色……あっ! 良く見ると青味がかってる目なんだ、吸い込まれそうな瞳だな。
そして程良く高い鼻.形の良い唇に、少し茶系の髪色……顔が小さく肌が透き通るように白い。
本当に女神! ううん.天使みたいだ!
自分では気付かずにボーっと見惚れてたようだ。
「大丈夫?」
俺が具合でも悪いのか?と心配して声を掛けてくれた。
初めて聞いた声は……凄く聞きやすい優しい声で綺麗な顔に合ってた。
「あっ! 大丈夫です。あの~、失礼ですけど…モデルさんですか?」
面識も無いのに突然変な事を聞いてしまった。
クスクスクス……
笑う顔は黙ってると綺麗な顔から可愛いらしい顔に変わる。
可愛い~‼︎
「違うよ。一般人! 俺なんかがモデルって~、モデルしてる人に悪いよ」
「そんな事ないです。そこら辺のモデルさんが霞むくらい綺麗です。一般人なんて勿体無い気がする」
本人を目の前に、綺麗とか……テンパって自分で何話してるのか…。
「ありがとう……ナンパ?……じゃないよね。彼氏と一緒だったし」
俺は慌てて手を顔の前で振った。
「ナンパって…違います.違います。それに凄くお似合いの2人だなぁ~って、彼氏と話してました」
彼氏の話をすると、花が咲くようにふわりっと笑った。
「本当に?そう見えてたなら、凄~く嬉しい~な」
うわぁ~可愛い~‼︎
この笑顔1度見たら忘れられないよ~。
「本当に本当です! 男の人にこう言うのも何ですが…美男美女って感じで、凄くお似合いのカップルで羨ましいです」
また、ふわりと笑う。
何度、見ても良い~な。
この笑い方、凄く好きだなぁ~。
「ありがとう。何だか、見られてたの照れちゃうな。でも、君達だって凄くお似合いだよ」
俺と海が?
それは……。
「それは無いです。海は凄く大人で包容力もあるし、仕事もできる人で格好良いからモテるんですそれに比べて俺は……何の取り柄も無いし子供で……不釣り合いなのは自分でも解ってるんです海に似合う.相応しい人になりたい!と、いつも思ってて……」
今まで誰にも言わずに居て、この間、神谷君の件で並木さんにだけ言った事を、今日会って間も無い人になぜ言ったのか?
遠くで見ると綺麗過ぎて近寄り難い感じだったけど、可愛く笑うこの人の優しい雰囲気が正直に言わせるんだ。
やはり、女神だから?
俺は自分で話して情けなくなり俯いてしまった。
いつの間にか近づいてたらしく俺の頭を数回撫でられ、俺は女神がそう言う事をするとは思わず顔を上げて目を見開き驚いた。
「そう思うのは君だけじゃないよ。さっきはお似合いだと言われて凄く嬉しかったけど……。俺も君と一緒だよ。俺には勿体無い人だ!とか相応しい人になりたい!ってずっと思ってる。たぶん、その気持ちはずっと変わらずに持ち続けるんだろうなでもね、そう思うだけじゃなく相応しい人になる為に努力もしなきゃね。年齢や経験とかじゃ敵わないから……まず出来る事からすれば良いんだよ例えば……信じる気持ちとか愛する気持ちは誰にも負けない!とか……ね。言ってて恥ずかしい~けど……君だけじゃないって事だよ。恋すれば誰でもそう思う時は1度はあるよ。それに自信持って良いと思うよ」
「自信って?」
何の自信だろう。
俺が何の事か解らずに聞いて女神が口を開きかけた時に、俺の背後のドアがバンッ!っと勢い良く開いた。
「ミキ! 遅いぞ‼︎ 大丈夫か⁉︎」
「伊織さん?」
俺と女神が向き合ってる姿を見て、彼氏は眉間に皺を寄せ凄い目で俺を睨んだ。
うわぁ~~、こわ~‼︎
「誰?こいつ⁉︎」
「ちょっと話してただけです」
「話?何で、知合いでも無い奴と話す事あるんだ?……目を離すと直ぐにこれだ‼︎ おちおち1人でトイレにも行かせられねー。おい‼︎ こいつが綺麗で可愛いからって、手を出すな‼︎ こいつは俺の者だ‼︎ ミキ、帰るぞ‼︎」
女神の腕を掴みトイレから出て行こうとした時に女神が俺に「…oxoxox…」と、何か言ってたけど強引に引っ張られて行き聞こえ無かった。
そして、そのまま去って行った。
ポツン!っと残された俺は女神の彼氏の行動と言動に呆気に取られてた。
マスターと海が話す通りだった。
凄い目で睨んで威嚇された。
嫉妬?束縛?……あんなに格好良くても、やはり女神が他の人に取られる不安があるのかも…。
でも、凄い自信家だった。
女神を ‘俺の者’って言い張れるって、凄い‼︎
俺は女神が使ってた手洗い場で顔を洗い手を洗った。
あの女神ですら、俺と同じ気持ちを持ってるんだ……そう思うと、俺が海に似合わないと思うのも当たり前なんだと思った。
そうか、考えるより努力か。
海も俺の為に家族を説得したり2人で居る為の努力してくれたんだ……俺に出来る事……海を信じて側で笑って居る事だ!……そう決めたはず。
良し‼︎
今日で会う事も無いかも……と思い、近くで見てみたい気持ちと1度話してみたい気持ちで、女神に接近してみたけど……外見が綺麗なだけじゃなく心も綺麗な人だった。
外見は無理でも……あ~言う風になりたい‼︎
女神は……俺の憧れの人になった。
それから海の元に向かい隣に座ると、対角線上に居た2人の姿は店の中には居なかった。
あのまま引っ張られるように帰ってったのかな?
喧嘩になってなきゃ良いけど……。
「どうした?遅かったな?」
「うん……あっ! マスター……あの向かいの人達は帰ったの?」
「向かい?はい! 先程、慌ただしく帰られました」
「喧嘩してなかった?」
「どう言う事でしょうか?」
「和樹、女神と何かあったのか?」
俺は海とマスターにトイレで女神と少し話しをしてたら、彼氏が凄い形相で入って来て ‘こいつが綺麗で可愛いからって手を出すな! こいつは俺の者だ!’と凄い目で睨まれて言われたと話した。
マスターは溜息を吐き、海は「凄い嫉妬と自信家だな~」と変に感心してた。
「ごめんなさい! もう会えないかも…と思ったらちょっと近くで見てみたかったんだ。そしたら具合が悪いのか?と心配してくれて声を掛けてくれたから……嬉しくって少しだけ話してだんだけど喧嘩になって無ければ良いけど」
マスターは俺を安心させるように笑みを見せ話す
「大丈夫ですよ。喧嘩にはなりませんから。あいつが1人で文句言っても結局はミキに弱いので。ミキもあいつの性格は充分に把握してますから、その辺は上手くやりますよ。なんやかんや言ってミキにベタ惚れですから喧嘩にもなりません。それにしても……ミキの事になると周りが見えなくなるって言うか……困ったもんです。気にしないで下さいね」
そう話し、また他のお客さんに呼ばれ俺達から離れた。
マスターは、あの2人と随分親しそうだった。
ミキ……って、名前じゃないよね?ニックネームかな?
可愛いらしい~!
「和樹もミーハーだな~。その気持ちは解らないでも無いけどな。で、近くで見た感想は?」
俺はさっき近くで見た女神の事を興奮気味に海に話してた。
「でね、外見も凄く綺麗なんだけど、心も凄く綺麗なんだよ~。ああ~、本当にあんな人がこの世の中には居るんだね。まだ、信じられないよ」
「和樹もファンになったのか?う~ん、困った。俺も女神のファンではあるが……女神に妬きもち焼きそうだ。俺も女神の彼氏じゃないが、和樹は俺の者だ!と言ってやりたいよ」
冗談半分で笑って話す海の耳元で、俺は他の人に聞かれないように内緒話しをした。
「俺は海の者だよ。愛してるのは海だけ!」
海は破顔し、凄く嬉しそうな顔になった。
女神の言う通りだね。
似合うとか似合わないとか相応しいとか相応しくないとかネガティブに考えずに、海を信じてこう!そしてこうやって海に愛を囁いていこう!
女神に今日出会えて良かった‼︎
マスターがカウンター内で「また1人信者が増えたな」とボソリと呟いたのは聞こえなかった。
一方のミキ達はタクシーの中だった。
「ったく、マジで心配で目が離せない! あんな子供みたいな奴にナンパされて…はあ~、困ったもんだ」
店を出てから、伊織さんはずっとブチブチ…言って……怒ってないようだけど。
「さっきも言いましたけど、ナンパじゃないですよ。具合悪いのか?と思って話してただけです」
「具合?そんなのほっとけ‼︎ ったく、そう見せかけて、ミキに近づくチャンスを伺ってたんだよ! ミキは人を疑わないし素直過ぎだ!」
「近づくって……伊織さん。あの子、彼氏と一緒に来てたの見てましたよね?カッコいい彼氏が居るのに」
「確かに、彼氏と一緒だったがミキの美しさにフラフラ……って魔が刺す事もあるだろ!って、おい! ミキ! カッコいい彼氏って言わなかったか?悪くは無かったがミキが言う程でも無い! 俺の方が何十倍もカッコいい‼︎ 俺の前で他の男の事をカッコいいと言ったな……帰ったら、お仕置きだな」
伊織さんには負けるけど、大人の雰囲気で充分にカッコいいと思うけどなぁ~、凄くモテそうだった。
あの子が引け目を感じるのも何となく解る気がするけど……2人で話してる雰囲気は遠くから見てても、凄く幸せそうで良かったんだけどなぁ~。
「聞いてるのか⁉︎ ミキ!」
マズい!
考え事して、良く聞いて無かった~。
タクシーの運転手さんの手前、俺は伊織さんの耳元で囁いた。
「俺が一番カッコいいと思うのは、伊織さんだけです。もちろん愛してるのも伊織さんだけです」
伊織さんは嬉しそうな顔に変わった。
これで、お仕置きは無し?
俺の腕をグッと引き、逆に耳元で囁かれた。
「俺も愛してる!……が、お仕置きはお仕置きだ。だが、少しだけ譲歩はしよう」
「え~~‼︎そんな~~」
ニヤニヤ笑って、運転手さんから見えない所で恋人繋ぎで手を握ってた。
あの子の悩みは俺の中にもある。
でも、大丈夫だよ。
あの子を見る彼氏は愛おしいって言う目でずっと見てた。
本人は気付いて無いようだけどね。
だって、伊織さんも同じ目で俺を見るから、俺には解った。
だから、大丈夫‼︎ 自信持って‼︎と、きちんとあの子に言いたかったなぁ~。
聞こえたかな?
あの子……マコに何となく似てるような気がした
小さいからかな?
友達になれそうだったけどなぁ~。
もう、会う事も無いかも……。
この先、ずっと幸せで居てくれるといいなぁ~。
あの彼氏なら大丈夫だね。
今日出会ったばかりのあの子の幸せを心の中で祈ってた。
~ END ~
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